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大きな鏡の前で汗を流して、手を振り上げ、足を上げ、腰を振って踊る練習生に混じって、短い髪をおでこで結んだダボダボのスウェット姿の少年が、ほんの僅かに遅れたテンポで必死な顔をして、同じ動作を繰り返していた。
「ねぇー、ミーニョー、なーんで、踊ってるのー」
軽快な音楽に合わせて、少年の隣にやってきたジェルミは、大きな声で、体を動かしたままミ尋ねると、ミニョも即座に返事を返している。
「えー、とですねー、オッパがぁ・・・」
「そこーおしゃべり禁止!真剣にやるー」
ミニョの返事を遮る指導者に顔を見合わせたふたりは、ラストの声と共に一層激しく体を動かした。
「はい!ワンツー、ワンツー!・・・・・・終了ー」
ダンスミュージックが途切れると、その場にへたり込む練習生に混ざって、ジェルミも汗を拭って座り込み、膝に手を置いて息を整えていたミニョは、大きく息を吐き出して壁際に向かっている。
「疲れたぁー」
「はい!ジェルミ!お水です・・・」
ペットボトルを持って戻って来たミニョは、ジェルミに一本を差し出して、そこに座り込むと美味しそうに水を飲み始めた。
「ありがとうー」
「ふぅー・・・上手く動けないですねぇー・・・」
ペットボトルから水をゴクゴクの飲み込んで、胡坐をかいた脚に前のめりに倒れこんで、柔軟をしているミニョの横で上向きの柔軟をしているジェルミの視線が、下に向いた。
「そんな事ないよー、キレは、なかったけど、ちゃんと出来てたよ」
「・・・そう、ですかぁ・・・」
前に倒れこむ姿勢で、顔だけ横に傾けたミニョは、爪先を掴んでにっこり微笑んでいる。
「うん!昔を思い出すよぉ・・・ミニョ全然踊れなかったんだよねー」
「・・・・・・そう、ですけど・・・」
「で、何で、ここにいるの!?」
「えっ、ああ、オッパが・・・」
両足を前に投げ出して、腰の横に手を置いたジェルミは、はぁーと大きく長い息を吐き出して天井を見上げ、少し細めた目で、苦笑を漏らしながら揃えた両足を腰から持ち上げた。
「お腹が出てるから行って来いって・・・ドレスが、着せられないって言われました」
「はぁ!?ミニョのどこがー!?」
上半身を起こして背筋を伸ばしたミニョは、お腹に両手を当てて、ぷっくり膨れ、トスンと床にお尻を落としたジェルミは、ミニョの手を見ている。
「はぁ・・・どこというか・・・」
「なんでさー!この前の撮影の時だって、ピッチピチのドレス着てたじゃん」
「あれはー・・・」
「えー、ヒョンってば、どこ見て言ってんのかなぁ」
「うーん、オッパしか、見えない場所!?」
真顔で答えるミニョにきょとんとしたジェルミが咳払いを一つして恥ずかしそうに笑った。
「そんなのっ!!?・・・・・・・・・ある・・・ね・・・」
お腹に当てた手を徐々に上に上げているミニョを見るジェルミは、天井を見上げて、瞳を回し、両手を揃えて床に置くとミニョの胸の辺りをじっと見つめた。
「えっ!あ、みっ、見ないで下さい」
「うーん・・・というか、見えないよね・・・なんで、そんな格好してるの!?」
膨れきったミニョは、ジェルミの視線を辿って、両腕で胸を隠し、けれど、スウェットの素材に守られた体にジェルミが首を傾げている。
「あー、それはー・・・」
「ジェルミソンベ!!」
「ぁ・・・い」
自身の服を見てジェルミに口を開きかけ、微笑んで答えを待っていたジェルミは、背中から呼ばれた声に振り返って、目を丸くした。
「紹介してくださいよ!」
「誰!?」
「コ・ミニョssiですよね」
「えっ・・・ああ、はい・・・・・・」
体格の良い若い男の子が、爽やかな笑顔を向けてミニョにペコンと頭を下げ、その後ろに数人の練習生が、群れを成して集まっている。
「うわぁ、本物・・・この前のCM見ましたぁ・・・歌も楽しみです」
「ミナムssiかと思いましたけど、なーんか動きが、違うなぁって」
「本当・・・よく似てる・・・ソンベで良いですか・・・」
矢継ぎ早にミニョに向かって掛けられる声に苦笑を浮かべたジェルミは、渋面のミニョを見た。
「あ、はははははは・・・・・・オッパのパーボー・・・」
「ねぇ、ミニョ・・・もしかして!?」
引き攣った笑いを浮かべて、小さく頭を下げ挨拶を返しているミニョは、顔を横に向けてぼそりと呟き、その声にジェルミが反応をしている。
「オッパが、この格好をしろって、くれたんです!!」
覚悟を決めた様なミニョが、ふくれっ面で、正座をするとミニョの格好を眺めたジェルミは頭に視線を注いで指をさした。
「それも!?」
「・・・・・・はい」
「効果・・・ない・・・よね」
「うっ・・・わたしもそう思います」
頭に両手を乗せて、ジェルミと見詰め合っているミニョは、上目遣いで、前後に動く鬘(かつら)を動かしている。
「ヒョン、何がしたかったんだろう」
「こんな事をしても意味は無いと思うのですが・・・」
熱いと手で頬を扇いだミニョは、その手を鬘に置いて、今正に脱ごうとしたが、その手をハシッと掴まれた。
「意味は、あるぞ」
「あれ、オッパ」
「ヒョン」
「意味はあるんだよ!コ・ミナム!?変な虫が付かないように!この格好なら、間違われるだろう」
「無駄だってば」
腕を掴まれたまま、吊り上げられる様に立たされたミニョは、よろっとよろけて、テギョンの胸に収まったのだった。
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コ・ミナムの発音は、テギョンが、不可思議顔呼んだ時の感じでお願いしまーす!
あれれ、オンマ=コ・ミナムに復帰・・・な展開ですがー(笑)またねー(*^▽^*)
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