Dress-code!?─────おまけの1

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事務所の車で家の前まで送ってもらった深夜。
眠ってしまったリンを抱えるテギョンと車を見送ったミニョは、鍵を開けながら空を一時見つめていた。

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「ふぅー・・・疲、れ、たな・・・」
「ええ、わたしも疲れました」
リンをベッドに降ろし、タイを緩めたテギョンは、布団を掛け直しているミニョの肩にそっと手を乗せ、首に腕を回して、背中から抱きしめた。
「あんなに騒いだのは・・・何年ぶりだ」
「すっかり、お眠ですね」
抱き竦める腕に手を添え、俯いて小さな寝息をたてているリンを見てクスクス笑っているミニョは、その頬に触れた唇に応える為に首を傾けている。
「一番はしゃいでいたからな」
「一番行きたがっていましたからね」
振り向いた顔と傾いた顔が、軽い口付を交わし、テギョンの腕の中で、ゆっくりと振り向かされた体が、少し深い口付を受け入れていた。
「行くぞ・・・」
「・・・・・・はい」
離れるふたりの暗黙のルール。
繋いだ手を離さぬ様に、離れぬ様に、寝返りを打ったリンの顔に廊下の明かりを引き摺りながら翳は消え、ドアは閉じられていった。

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「オッ・・・パ・・・どう、されました」
寝室を出て、無言でミニョの手を引いてリビングに向かっていたテギョンは、突然、ピタリと立ち止まるとくるっと踵を返し、ミニョの手を引いたまま寝室の前を通り過ぎた。
「えっ、ちょ、あの、オッパ」
声を掛けても無言で、唇に触れながら、考えこんでいる様子のテギョンにミニョもやがて無言になり、地下への階段を下りきると、ポケットから鍵を取り出したテギョンに不思議な顔をしている。
「オッパァ！？」
「ふふ、ふたりの夜だ・・・ファンミを開催させて頂けますか奥様」
「ぁ・・・」
鍵を開け、振り返り、ミニョの耳元に近づいた唇が、ささやかな言葉とささやかな刺激を齎して、ミニョは、空いた手で耳に触れている。
「ん、ファンミ・・・ですっか・・・」
耳朶に触れ、赤く染まるそこを熱を冷ます様に触れているミニョにテギョンの腕が、背中を回って肩を抱き寄せ、大きな手のひらが、指の間にミニョの耳を引っ掛けて、頭を引き寄せた。
「ああ、少ーしだけ、な・・・」
向かう先は、ピアノの前、引き寄せられた肩と反対の腕をテギョンの腰に回しているミニョが、顔に落ちる影に気付き、ふと視線をあげる頃、それは、期待ではなく、希望、希望ではなく、至極当然な思惑がふたりの距離を小さくしていた。
「っ・・・オッパ・・・」
「ふふ、甘いな・・・」
離れた距離で、見上げるミニョの唇にきらりと光った水滴をテギョンがまた攫った。
「・・・甘いのは、オッパのせい・・・です、から・・・」
「どうして！？」
ミニョを椅子に座らせて隣に腰を下ろしながら、片頬だけをあげるテギョンに大きな瞳が、揺れた。
「えっ・・・」
「どうして甘い・・・」
黒い光沢のその上に映りこむミニョとテギョンの顔が見合わされ、蓋の開いた白と黒の鍵の上で長い指がメロディを紡ぎ始めている。
「そっれは・・・」
「サラン！？」
「サラン・・・」
「そう・・・サラン・・・愛しき奥様・・・胸の内を聞いて頂けますか」
形式張って、胸を張って微笑むテギョンにミニョが、目を見張って何度も頷いた。
「ふふ、サランヘ・・・愛しいあなたに・・・」
紡がれるメロディーと即興で歌い上げていくテギョンに目を閉じたミニョは、時々顔をあげ、微笑んで見つめるテギョンを見つけ、その度、頬を染め、顔を手で包んでいる。


「愛してる！？」
「愛してますよ」
「どんな姿でも！？」
「勿論！どんなオッパでも！私は、ファン・テギョンのペンです！」
「ふふ、俺は俺・・・か」
「そうです！オッパは、輝き続けるのです！」
「お前が、輝かせてくれるんだ」
鍵盤から離れた指先が、ミニョの頬を首を滑り、今日、何度目かのキスを繰り返していたのだった。

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─────表題『鳴無の庭―愛しき人へ贈る歌』より─────


遠ざかる距離に悲しみが膨れ

近づいた距離に不安が襲った

胸が詰って何も言えなくなった

消えてしまいそうなあなたを捉（とら）まえる

それ以外の言葉を知らなかった

それ以外の言葉を思いつかなかった

愛しいですか俺の事

愛しいですよ俺の天使

恋焦がれたあの日の様に俺の胸はいつでも躍る

あなたの笑顔に踊らされる

愛しいですか俺の事

愛しい思いを積み重ね

愛を育てて生きたいですね

愛しいあなたへ贈る歌とともに


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最後まで読んで頂いてありがとうございました(^_^)