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事務所の二階、A.N.Jellの練習室の前を通り抜け、隣の部屋に入ったリンは、袋を開けて、中に入っている箱を見ながら声を掛けた。
「オンマー!あのねー、これ貰ったのー」
リンの声に振り返り、差し出された細長い箱に視線を落としたミニョは、不思議な顔で、唇を尖らせて、なぜなぜ顔をして頬を凹ませたリンににっこり微笑んでいた。
「エンジェルのペンからですかぁ」
「ううん、えっとね、事務所の前だけど・・・僕より、小さい女の子」
「えっ!?」
リンの顔と箱を交互に見比べたミニョは、真顔になって、スッと背筋を伸ばすと辺りを見回し、スーッと深呼吸をした。
「オッ、パーーーーーー!!!!!!!」
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「なっ!!!何だっ!!!何、何が、あった!!」
「何っ!どうしたのっ!」
「大っきな声だなぁ・・・何だよー」
「どうしたんだ!?」
「オンマー!煩ぁーい!!!」
床にしゃがみ込んで耳を塞いだリンが、立ち上がると、ツカツカ、ドタドタと隣の練習室からやってきたA.N.Jellの面々が、何事と我先にドアを潜り、肩がぶつかって互いを睨んでいる者が約二名。
「何だ!」
「オオオオオッパー!!!こっ、こっ、これっ!これー!見てください!!」
興奮した様子のミニョにペトッと背中から腰に抱きついたリンが、横から顔を覗かせて、先頭にいたテギョンを見上げている。
「何、だ・・・プレゼント!?」
「そっ、そっ、そうです」
「何だよ・・・たかが、プレゼント、か」
大声に驚いて慌てて駆けつけたのに貰った箱を見せられて、呆れ、ミニョを睨みつけるテギョンは、腰に抱きついているリンと視線が合い、ニィっと笑ったリンに眉を顰めた。
「チョコレート!?」
「チョコレートだろう」
ジェルミと入り口でぶつかっていた肩を抜いたミナムが、テギョンの脇からひょこっと顔を出し、ちょっぴり不満顔のジェルミもミナムの後ろから覗いて、テギョンが、ふたりを見ている。
「バレンタインだよね」
「ああ、今日、下でペンから貰った・・・ヒョンも貰ったでしょ」
上目遣いで見上げたミナムの顔に視線を移したテギョンは、けれど、逸らして派手に泳がせた。
「・・・あ、ああ、貰っ、た・・・かもな・・・」
らしからぬ態度で、顔も逸らしたテギョンにミナムが指を向けている。
「あー!まーた、スタッフルームに置いて来たなぁ」
悪戯を見つけた様にミナムがテギョンを指差すと、悪戯を見つかった様に伐の悪い顔をしたテギョンは、ミニョをちらりと見て、唇を軽く噛締めた。
「うっ、煩っい・・・食べれる量じゃないだろう」
「オッパの分は、後で、貰って帰りますから大丈夫です」
持ち帰るチョコレートの行方は、毎年ミニョが孤児院に持って行くか、お菓子の材料になるが、気分悪そうに胸を抑えているテギョンににっこり微笑んで、振り返ったミニョは、リンと頷きあっている。
「そっ、それより!何をそんなに興奮しているんだ!?」
テギョンの顔には、今年は、何を作るんだと書いてあって、ジェルミとミナムが、愁傷な顔でテギョンを見やり、ギロリと動いた瞳に慌てて大袈裟に苦笑いをした。
「あっ、ああああ、そっ、こっ、これ!」
「あのねー、下で、貰ったのー」
ミニョの後ろから、引っ付いたままテギョンに答えたリンに顔を見合わせたジェルミとミナムとあさっての方を向いてから下を見た三人の動きが綺麗に揃い、怪訝な顔が、カクカクぎこちなく下を向いている。
「お、前が」
「リンが」
「誰に」
「小さな女の子ですよね」
リンの手を外して、隣にしゃがみこんだミニョは、嬉しそうに微笑み、長方形の箱とリンを交互に見つめた。
「下ー!ペンのヌナ達の所に居たの」
「ペンからは!?そっちもくれただろう!」
「うん、貰った、それはね、あっち!」
リンが、指差した方を見たジェルミとミナムは、ごくりと生唾を飲み込んでいる。
「すっごくない・・・俺達より多い!?」
「そんな事ないだろう・・・ヒョンの分も入ってるって!」
事務所に届けられる量は、それの比ではないだろうが、部屋のソファに置かれた大きな紙袋一杯のチョコレートの山を見たジェルミとミナムは、顔を見合わせ、ガックリと肩を落として項垂れた。
「違うのー!僕にって、くれたんだもん!」
少し剥れたリンが、ミナムを睨むと大仰に笑ったミナムが、リンに謝っていて、テギョンは、リンの持っている袋に目を向けると何かが、気になった様子で、手を差し出している。
「しっかし、袋・・・随分、ボロボロだな・・・」
ミナムが、袋に近づき、引き摺った様な底を指差して、一番下のプレゼント箱が傷付いているのを指摘した。
「うん!だって、僕が運んできたんだもん!」
驚いた表情で、リンを見たミナムは、テギョンを見上げ、不思議な顔をしている。
「運んでくれる奴、居なかったのか」
暗にテギョンと一緒じゃなかったのかと聞いているミナムにリンもテギョンを見上げて、頷いた。
「警備のヒョンがね、持ってくれるって言ったんだけど、いらないって言ったの」
「おっ前、ここまで、一人で運んできたのか」
片手で持ち上げた袋の重みにまた驚いたミナムが、ふっと笑っている。
「うん!」
「偉っいなぁ!こんなに重い物を良く運んできたなぁ」
「へへへへー」
ミナムに頭を撫でられたリンは、照れくさそうに笑っていた。
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「それで、大声の理由は、リンが、チョコレートを貰った事か・・・」
リンから受け取った袋と鍵を片手に白い紙を見ていたテギョンは、ミニョを見ている。
「そっ!そうです!!!初めてですよー」
ミナムとリンとジェルミの間の会話をにこにこして黙って聞いていたミニョは、ハッとしてテギョンを振り返った。
「初めて!?」
テギョンの動かされた視線の先にソファの紙袋があり、一緒に視線を動かしたミニョもそれを見て、首を振っている。
「あん・・・そっちは、毎年頂いてます!ありがたいです・・・オッパのペンには、感謝してます!けど・・・」
「何が、初めてなんだよ」
手にした紙を指先で摘み、そこに書かれている文字を見ているテギョンは、知れっとミニョ尋ねた。
「バレンタインチョコですよ!同じ年くらいの女の子から!」
「・・・・・・・・・それで、あの、大声・・・か」
呆れた様に溜息を吐き、首を振って、脱力したテギョンは、額に手を当てて俯いたが、その口元は緩く上向いている。
「ヒョン・・・女って・・・」
「女って、そういうものだよ・・・小さな事に感動できる・・・」
「チョ、チョコレートだよ!!たかが、チョ・・・」
ジェルミも呆れた様に口を開け、ポンと肩に手を置いたミナムを振り返って、頬に手を当てた。
「たかがじゃないです!リンの初めてです!!!」
ムッとして剥れたミニョが、ふたりを恨めしそうに見ている。
「バレンタインのチョコレートですよー!!オッパ!!もっと感動して!!!」
感動が薄いと剥れているミニョは、テギョンに近づいて、顔をあげたテギョンは、ミニョの肩を抱き寄せている。
「ねー、オンマー・・・僕もー、良く、わかんない・・・」
「えー!何故ですかぁ・・・リンが、好きって言われたのに」
「・・・・・・言われてないもん・・・」
不思議な顔で首を傾げて、見上げたリンにきょとんとしたミニョは、頬を膨らませ、そんなミニョを見たリンは、やっぱり首を傾げた。
「んーと、あのねー、それ、手紙が、あったでしょー」
「手紙ですか!?」
「ああ、これ・・・だろう」
ミニョと暫く見詰め合っていたリンが、テギョンの持っている紙を指差し、不思議な顔でテギョンが、ひらひら動かした紙を見たミニョは、首を傾げている。
「読むか!?」
「あっ、はい・・・・・・」
ミニョの肩から腕をおろし、紙をミニョに渡したテギョンは、屈みこむと、リンの脇腹に手を入れた。
「お前宛のチョコじゃなかったのは、残念だな」
リンの体を重そうに抱き上げ、額をぶつけて、小声でひっそり話すテギョンにリンも首に腕を回して小声で話している。
「ううん、あの子ね、公園で、何回か、会ったの!いっつも一人でね!オンマが、迎えに来ると僕とオンマの事を良く見てたよー」
「そうか」
微笑むリンに薄く笑うテギョンは、悲しんでも、落胆してもいないリンの頭を撫で、ミニョとミニョの後ろで手紙を覗き込んでいるジェルミとミナムを振り返った。
「大好きな人にチョコレートをあげる日なんだろう」
「大好きな皆さんに愛を届けたいんです・・・か」
「可哀想だね」
「リンへの告白じゃなかったんですね・・・」
落胆した顔のミニョは、少し悲しそうに微笑んでいる。
「ふふ、僕はまだ、オンマの手作りチョコで良いもーん」
手紙を読み終えて、溜息を吐いたミニョにテギョンが笑いかけ、リンも両手を上げてミニョを見たが、怪訝な顔をしたテギョンが、リンと顔を見合わせている。
「お前のチョコは、俺のペンからの愛だろうが!」
「でも、オンマの手作りは、僕へのオンマの愛だもん!アッパのバレンタイン愛は、食べれないじゃないかー!」
「ぁあん、俺は、別な形の愛を貰うから良いんだ!!」
「そんなの駄目だもん!オンマのは僕の!!」
「俺のだと言ってるだろう!」
相変わらずの言い合いを始めた親子にミナムが、両手を前に出して、呆れたポーズを作り、ジェルミは首を振るとポンとミニョの前に飛び出した。
「どっちのでも良いよー、ね、ミーニョー俺に愛は無いのー」
ミニョの前で手を差し出しているジェルミにミニョもにっこり微笑んでいる。
「ありますよ!ジェルミの分!」
手紙をふたつに折って、肩に触れているジェルミを入れ替えた気持ちで、にっこり、振り返ったミニョは、カバンと一緒に置いていた袋を漁って小さな箱を取り出した。
「はい!オッパもあげますね!あっ!あとシヌオッパの分も!?」
ミナムの手の上に次々事務所のスタッフの名前を上げて、箱を積み上げていくミニョにテギョンの唇が、徐々に前に突き出ている。
「コー・ミーニョー」
「オンマ!僕のは!」
「リンの分も勿論!でもね!ほら、アッパのペンからの愛で、オンマが、もっと大きいのを作ってあげます!」
ソファの袋を指差し、にっこり笑ったミニョに両手を上げるリンもにっこり笑い返したが、テギョンの顔が、真ん中に寄っていた。
「俺の!」
「オッパは・・・あ、えっと、その、別な形の愛を受け取って下さいね」
はにかんだ笑顔で、テギョンを見つめて、肩に手を置き、耳元で小さく声を出して、キスをしたミニョに緩んだ頬とあがる口角を慌てて抑えつけ、にへらと笑いながら、そうかと頷いているテギョンとその顔に不満そうに膨れているリンの甘く苦いバレンタインの出来事だった。
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あんにょん!女のこのエピソードは、また、ホワイトデーにUP予定です!
ご訪問ありがとうございました(*^▽^*)
ささ、通常業務にもどらねばーε=ε=ε= ヾ(*~▽~)ノまたねー(^^)/~~~
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Table of contents
Favorite music excerpt 再生リストからchoiceコントロールから音量変更可 不可はページ再読込❦一部字幕ON&設定で日本語約可
loveYou're Beautiful❦Story it was based Korean drama "You're Beautiful" secondary creation.❧
Hope to see someday"You're Beautiful" of After that.
Aliasすずらん──長い長い「物語」を続けております。貴方の癒しになれる一作品でもある事を願って。イジられキャラテギョンssi多(笑)
交差点second掲載中❦フォローしてね(^▽^)
コメディ・ほのぼの路線を突っ走っています(*^▽^*)あまりシリアスは無いので、そちらがお好きな方は、『悪女』シリーズ等を気に入って頂けると嬉し。
『テギョンとミニョの子供・・・』という処からお話を始めオリキャラ満載でお届けしておりましたが、登場人物も交差し始め統一中。
長らくお付き合いいただいている方も初めましてな方もお好きな記事・作品等教えて頂けると嬉し(^v^)
ご意見ご要望はこちら★すずらん★メッセージを送ってください。BM仕様限定のごくごく一部解除しました。
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