「とっーても良いお天気!ですねー!こんな日は、お外でランチも良いかもしれません」
ひとりごちて、足元の籠バッグに手を伸ばし、飛び出た水筒の頭を押し込みながら顔を綻ばせたが、その顔が、次第に歪んでいる。
「ふ、ぇ、っく、しゅん・・・・・・!?」
俯いて両手で鼻を押さえ、目を瞬かせた。
「風邪・・・でしょうか」
籠を持ち上げながら、大きく首を傾げるミニョは、首を振って、大丈夫ですと誰とも無く言い聞かせるけれど、振り返りながら肩を上げると周りを見回した。
「寒・・・くは、無いです・・・よね」
籠バッグを片手にショルダーバッグの紐を直したミニョは、頬に空気を入れたり唇を突き出したり、表情を変えながら庭先を歩き、天を仰いだまま門を曲がっている。
「おはようございます」
「えっ!!!あ、お、はようございま・・・す、えっ・・・」
掛けられた声に空を見ていた顔が、そのまま返事をしたが、跳ねるほど慌てた様子で、きょろきょろ辺りを見回し、声の主を見つけたミニョは、やがて、不思議な顔をした。
「事務所まで、お送りしますよ、乗ってください」
家を曲がった先の道路に止められた黒い高級車に手を翳してにっこり微笑んでいるキム・ソンジュンを見たミニョは、呆けた顔で、口をあんぐり開け、暫くジッと見ていたが、手を前に出して首を振っている。
「えっ、やっ、あの・・・こ、困、ります・・・」
「どうしてです!?事務所へ行くんですよね・・・バスかタクシーで、行かれるんでしょ!?」
「えっ、ええ、そうですけど、でも、あの・・・」
ソンジュンが、目の前に居る事に少しパニックになっているミニョは、しどろもどろに答えながら、腰が引けていて、足元を見ていたソンジュンは、寄りかかっていた街路樹に手を残して、体を起こし、ミニョへ向き直ってもう一度、手を差し出した。
「どうぞ、今日は、何の意図もありませんよ・・・私もアン社長と会う約束が、あるんです」微笑んでミニョを見下しているソンジュンを上目遣いで見ているミニョは、視線を泳がせながら、警戒心を露にしている。
「そっ、そうですか・・・えっと、でも、あの・・・」
「こーんな事だと思った」
ミニョが、ソンジュンの差し出した手に視線を落とし、微笑んだソンジュンが、街路樹から手を離した瞬間、ミニョの後方から大きな声が聞こえた。
「ヒョン!」
「ユンギssi!」
振り返ったミニョは、ほっと安堵を浮かべていてその顔を見たユンギは、小さく舌打をしている。
「お前の車を見かけたって聞いたからさ、おかしいと思ったんだ」
ゆったり歩いて、ミニョとソンジュンの間に割って入ったユンギは、肩越しに振り返る事無くミニョに後ろを見る様に手で促し、不満そうにユンギを見ているソンジュンは、つまらなそうに溜息を吐いた。
「ジュノー、ミニョssiを連れて行けー」
ソンジュンを呆れた様に見ているユンギが、道路を駆け下りてくるジュンシンに向かって、声を掛け、首だけ後ろを見ていたミニョは、駆けてくる少年を見つけて体ごと向き直っている。
「アラッソー!ヌナーあーんにょん、一緒に行こう」
ミニョの前までやってきたジュンシンが、ミニョを見上げて、挨拶をする間にミニョの表情もいつもの様子に戻り、笑顔を向けたミニョは、ジュンシンの頭に手を伸ばしていた。
「おはようございます!今日も元気ですね」
やんちゃ坊主よろしく息を弾ませ、ミニョに髪を撫でられ、照れた表情を浮かべたジュンシンは、ミニョのバッグに手を掛け持つ仕種をするとミニョが、重いですよと笑って、それを離している。
「ね、リンは、もう、いないのー」
「ええ、オッパが、連れて行きましたから」
話をしているユンギとソンジュンを振り返ったミニョに大丈夫だから行こうと手を引いたジュンシンは、止められたユンギの車に向かってミニョと並んで歩き始め、車の外に出ていたヒジュンが、ミニョに向かって頭を下げていた。
「そっかー、俺達、昼からだから、まだいるのかと思ってた」
重そうにミニョの籠バッグを胸に抱え、良い匂いがすると鼻を鳴らしたジュンシンにクスクス笑っているミニョは、お昼ごはんだから、一緒に食べましょうと笑っている。
「ふふ、リンは、テギョンssiと歌の練習をするそうですよ」
「あっ!そっかぁ、リン、やっとアッパに言ったんだ・・・俺さぁ、歌にもちょっと自信あったけど、上手く歌えてない気がしてたんだぁ・・・だから、リンが、歌えるなら、あいつが、歌った方が上手くいくんじゃないかと思うんだよね」
「あら、A.N.Jellの歌なのに!?」
ジュンシンの子供らしくない淡々とした言葉に驚いた表情を浮かべたミニョは、車の傍に戻って、ヒジュンに荷物を渡したジュンシンに訊ね、ミニョを振り返ったジュンシンは、はにかんで頭に両手を組んだ。
「うーん・・・何だろう・・・テギョンssiの作る歌、大好きなんだーだから、あれを聞きすぎて、違うって思うのかも知れないって、ユソンとユンギと話してたんだぁ・・・なーんか、俺が歌うと違う気がするんだよね、でもさぁ、リンが、歌うと違うんだけど、違わないっていうかさぁ、ピアノなら俺の方が上手いと思うんだけど、うーん、よく解んないや・・・」
「そうですか」
ジュンシンの小さな体を去来する感慨に思いを馳せたミニョは、柔らかい微笑を浮かべて、ジュンシンの背中に手を添え、ドアを開けて待っていたヒジュンと挨拶を交わしている。
「うん!俺にも男のプライドくらいあるんだぜ!」
「まぁ・・・頼もしい・・・」
「莫迦な事を言ってるんじゃないよ!」
バッグをヒジュンに渡し、胸を張ってピースサインを作ったジュンシンに笑顔を零したミニョの脇から、ニュッと腕が伸びて、渋面のユンギが、ジュンシンの頭を軽く小突き、後頭部を抑えたジュンシンが、ユンギを見上げて、足を上げた。
「ミアネ、ミニョssi・・・ソンジュンは、行かせました」
ジュンシンの蹴り足を軽く避けながら、ミニョに向かって、苦笑いを浮かべたユンギは、ドアを開けていたヒジュンの肩に軽く触れ、まだ足元で、ユンギに何か言いたそうに見ているジュンシンに顎をあげて先に乗るように促し、運転席に回ったヒジュンとジュンシンは車に乗り込んでいる。
「あっ、いえ、すみません・・・えっと・・・」
心配そうな顔で、ソンジュンと出くわした事を驚いたとユンギに伝えたミニョは、何か約束をしていたかと自分を卑下していて、クスッと笑ったユンギは、否定をしながら、ミニョにも車に乗る様に促した。
「あいつには、必要以上に近づくなとテギョンに、言われませんでしたか」
「あっ、えっ、ええ、はい、その・・・」
「はは、あいつにもそう言ったんですけどね・・・」
「えっ、とユンギssiは、どうして・・・」
「ヒジュンが、さっき、ここを通ったら、見覚えのない車が、止まっていたと言うので、いつもこの辺は、高級車も結構止まっていますけど、こんな時間にファン家の前に止まってる車っていうから、何だか嫌な予感がしたんですよ」
大きな溜息を吐いてヒジュンと目を合わせ、どっと疲れた様にダッシュボードに伏せたユンギに
会社からで良いかと笑って声を掛けたヒジュンが、キーを回し、頷いて手をひらひら振ったユンギにミニョの隣で、まだ頭を抑えていたジュンシンが、不満そうに舌を出した。
「テギョンに突っかかるのは、止めたんですけどね、あいつも一言多いというか・・・諦めが、悪いというか、ジョンアssiが、専属に決まったでしょ」
顔を上げ、振り向いたタイミングで、ジュンシンの不満顔が視界に入ったユンギは、子供のように
手までつけて目元を引っ張っりながら舌を出し、それにぎょっとしたジュンシンが、ヒクッと喉を鳴らしてシートに沈んでいる。
「ええ、はい!事務所、との契約、です、が、私に、ついてくださる、とアン社長から聞きました」
沈んだシートで、腕を組んだジュンシンと子供相手に変な顔を作って見せたユンギにクスクス笑ったミニョは、お腹と口を押さえながら、ユンギに返事をしていて途切れ途切れの返事にユンギも笑って前を向いた。
「それでね・・・テギョンもモデルの契約を引き受けたのは、聞いてますか!?」
一日の始まりにスケジュールの確認なのか、PCを取り出したユンギは、真面目な声で、振り返る事無くミニョと話を続けている。
「ええ、支援団体のモデルの件ですよね」
「そうです」
「それが、何か!?」
ミニョは、不思議な顔で、考える表情を浮かべたが、テギョンが出かけていって、帰ってくるなり、イラついた顔でミニョをきつく抱き締めて、妙な事を言っていた事を思い出し、ああとほくそ笑んでいて、何となくミニョの方を見ていたジュンシンが、不思議なものを見る様に首を傾げた。
「その打ち合わせを、先日、三人でしたんですけど、また、やりあったんですよね、あのふたり・・・」
「もしかして、また、止めに入られたのですか!?」
「ええ、少し、疲れました」
PCを操作しているユンギは、ファイルをクリックするとそこから、音楽が流れ始め、すーっと透き通る様なバラード調の曲にミニョも耳を傾け、けれど、直に膝に両手を乗せてその場で頭を下げている。
「すっ、すみません・・・でした」
「ミニョssiが、謝る事ではないです・・・あのふたりが、おかしいんです」
「でっ、でも、あの、わたしには・・・その、オッパだけ・・・なの、で」
恥かしそうに俯いて、けれど、はっきりテギョンが好きと口にしたミニョにユンギもヒジュンもジュンシンさえも固まった様に一瞬黙り込み、ゴクンと誰かの喉が鳴る音が車内に響いた。
「あ、はは、凄い、告白、です、ね・・・あいつにもそう言ってください」
楽しそうな笑顔を浮かべて、腹を抱えたユンギにヒジュンも隣を見て笑い、大きな笑い声が響く車内で、恍けているミニョは、両手を拳に握っている。
「今度会ったら、そうします!」
ククククとひとしきり、笑いを堪えているユンギは、また手元を操作して音量を少しあげると、PCを持ち上げて、後部シートを振り返った。
「ところで、これ、どう思いますか!?」
「へっ!?」
車内に流れている音について、PCを持って振り返り、天井を指差したユンギを見つめて、きょとんとした表情で首を傾げて、瞳を回し、やがて、静かに流れている音に耳を澄ませたそんなミニョの一日の始まりだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★★★★★★☆☆☆★★★★★
あんにょん(^^)前回『ToYou─』から、テギョンの俺様優越感をどこまで引き出せるかなぁ(^Ⅲ^)
頑張って書くので応援してね!
本日も最後までお付き合い&ご訪問ありがとうございました(*^▽^*)
溜まってたピグ画像放出v(^-^)v
人ん家の島で遊んでたら、ピグが嵌って動かなくなった(・・;)
『助けてー(;'∀')』な状態になっていた所に『天の助けがやって来て挨拶された』(^^)/
ドッペル君の巣窟で本物の見分けがつけ辛いのが難点なWorld・・・
お饅頭とクッキー♪ありがとう(^_^)美味しかったよー(^^♪
ピグ友の皆様いつも構ってくれてありがとうございます(^^)/またね(^^)
![]() |
byアメーバピグ |
にほんブログ村