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「アッパー、開いたよー」
「ああ、すぐ行く・・・っち、っとに、どうして、こうなったんだ」
「アッパー」
「ああ・・・」
玄関の扉を重そうに開けて、そこを背中で押さえ、駐車場に止められたテギョンの車に向かって声を掛けているリンは、渡された鍵を弄りながらテギョンが来るのを待っていて、助手席からミニョを降ろしているテギョンは、ぶつぶつ文句を言いながら、だらりと下がったミニョの腕を肩に乗せ、その体を抱き上げてリンに近づいていった。
「オンマ、寝ちゃったのー!?」
すやすやと寝息の様に規則正しい呼吸を繰り返しているミニョを覗き込む様に背伸びをしているリンは、テギョンが、玄関に入ってしまうと、抑えていた扉から離れ、靴を脱いでいるテギョンの横で急いで靴を脱いでいる。
「ああ、どうやら、そうらしいな」
「ふーん・・・お酒呑んだからぁ!?」
「ああ、けど、今日の疲れもあるだろうな・・・」
「ふーん・・・」
駆け込んだ玄関から寝室の扉を開けたリンは、電気を点けてまた扉を抑えてテギョンを待っていて、その扉をミニョを起こさない様にゆっくり入ってきたテギョンは、ベッドにミニョを降ろすと着ている服を脱がし始めたが、ピタッと動きを止めると後ろを振り返った。
「なぁにー!?」
「・・・お前こそ・・・なん、だよ・・・」
「べっつにー」
へへと笑ったリンは、お風呂ーと叫びながら、寝室を出て行ってしまいその後ろ姿を見送ったテギョンは、首を傾げて不思議な顔をしている。
「なんだ・・・あいつ・・・」
ミニョの首の下に手を入れたまま、再び服を脱がそうと振り返って手を掛けたテギョンだったが、ぱちくりと瞬きをしている大きな瞳と目が合って、また動きを止めた。
「ミニョ・・・」
「オッパ・・・何を・・・」
「何って・・・服を・・・」
「服・・・・・・!?」
テギョンの手に手を乗せたミニョの視線が、ゆっくり下がると、肌蹴ている自分の体を見たミニョが、テギョンの手を持ち上げながら、口を大きく開けていて、その表情にぎょっとした表情を浮かべたテギョンは、ミニョの口に手を当てるとボスンと勢いよくミニョの体に覆い被さりながら、ベッドに押し付けている。
「叫ぶなっ!!」
「ん・・・んぅっ・・・・・・っ」
テギョンに口を押さえつけられ、苦しそうに手足を動かすミニョは、テギョンの肩に手を掛けて離そうとしているが、ミニョの上で溜息を吐いたテギョンは、チッと舌打をして、リンの奴と口にしてからゆっくり起き上がった。
「ぷっはぁ・・・はぁはぁはぁはぁ、おお、オッパっ・・・くっ、苦しっ」
「ああ、すまない・・・ッ、叫ぶ程じゃないだろう」
「びっ、びっくりしたのです!!」
ぷくっと膨れた顔でテギョンを見ているミニョは、背中を向けて唇に指を当てているテギョンに首を傾げるとベッドの上に正座してジャケットを引っ張っている。
「どうしたんですかぁ!?」
「ん・・・ああ、リンの奴がな・・・」
「リン!?あれ、あの子は!?」
きょろきょろと周りを見ているミニョは、ベッドから降りると欠伸を噛み殺して、服を整えた。
「風呂って、叫んでたからな・・・風呂じゃないのか」
「えっ!?一人で!?」
「まさか・・・一人じゃ入れないだろう・・・」
「そ・・・うですね」
振り返ったテギョンは、ミニョと顔を見合わせると首を傾げたミニョの頬に手を伸ばし、何故かその頬を少し摘んでいて、痛いと顔を顰めたミニョが、テギョンを見上げている。
「何をするんですかぁ!?」
「おっ前・・・勝手に決めて、どうするつもりだ」
「どう・・・って・・・オッパも許可してくれたでしょう」
「俺は、今日の仕事の許可は出したけど、今後の奴の仕事を請けるなんて言ってないだろう・・・検討するだけだ」
「じゃぁ、ダメですかぁ!?」
「駄目とも言ってないだろう」
寝室を出たふたりは、並んで歩きながらリビングに向かい、向かっている途中で、リンの声が聞こえると顔を見合わせて、くるっと振り返り、バスルームに続く扉を開けた。
「きゃー!!プールみたーい!!」
「おいっ!お前、何を!!」
「ちょ、リン!何をやって・・・」
バスルームの扉を開けたテギョンに続いて、その後ろから顔を覗かせたミニョは、大きなバスタブの中に水を並並張って、そこに飛び込み、零れた僅かなお湯で、タイルの上に戻って、泳ぐ様に遊んでいるリンを目にすると、両手を顔に当ててクスクス笑い始め、その前で呆れた様に首を振っているテギョンは、項垂れると大きな溜息を吐いている。
「ふふ、リン、お湯がもったいないです!もう、止めてね」
「はぁい!」
テギョンとミニョに気がついて、返事をしたリンは、ふたりの前に駆け寄ってくると、テギョンを見上げてから、ミニョの手を引いた。
「ね、オンマー!一緒に入ろう!」
「ええ、そうですね・・・」
リンに返事をしながら、テギョンを見たミニョは、アッパはと訊ねて、再びバスタブに走って行ったリンを見ながら、タオルの置いてある棚に手を伸ばしている。
「どうされますか!?」
「どう・・・って、入るに決まってるだろう!」
「な、おっ、怒らなくても・・・」
「怒ってない、だいたい、お前が、起きなければ、俺が、リンを入れるつもりだったんだ」
「あっ、そうなのですね・・・じゃぁ、アッパが、入っていらしてください」
「やーだー!オンマも一緒が、良いのー」
テギョンとミニョの会話に正に水をさすリンは、バスタブの中でお湯を叩いてきゃっきゃと笑っていて、また顔を見合わせたテギョンとミニョは、頬を染めたミニョと片頬をあげたテギョンと一瞬早くテギョンの手がミニョに伸び、今度こそミニョが、小さくだが、悲鳴をあげた。
「おおおおお、オッパーーー!」
「何だよ!リンのリクエストだろう!3人で入るぞ!」
あっという間に身包み剥されるミニョは、テギョンの前で恥かしそうに両手を前に回していて、ふふんと顎をあげたテギョンは、タオルを持ち上げると、それをミニョの体に巻いて背中を押し、服に手を掛けている。
「ふ、3人で入るのも久しぶりだな、たっぷり洗ってやるぞ!コ・ミニョssi」
「わっ、わたしじゃなくてリンを・・・」
「リンは、お前が洗えば良いだろう」
早くーと手招いているリンの傍で、シャワーコックを捻ったミニョとタオルを腰に巻き付けてバスルームに入って行ったテギョンの一日の終わりだった。
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