「10年前のオファーだ」
ソンジュンの次の言葉を待っていたミニョに向かい合う様に向きを変えたテギョンが、真顔で真剣な表情で、じっと瞳を覗き込みながら言葉を紡ぎ、見つめていた。
「お前・・・覚えてるか」
ソンジュンではなく、テギョンが語り始めた事に硬い表情で動揺を見せたミニョだが、やがてコクンと頷いた事にテギョンも頷き、テーブルに手をついて指先を組むと、溜息を吐きながら、シヌとミナムを上目遣いに見上げ、首を振った姿を見てテーブルに肘をつき、唇にその手を当てた。
「以前ELcompanyのオファーを受けた時、今回と同じ、歌とのタイアップだった・・・だろう」
「ええ、同じ、口紅のCMでしたよね・・・オッパの歌とA.N.Jellとのタイアップ・・・でも、あの、一度きり・・・事件って・・・!?」
何ですかと呟きながら、ミニョは唇にひとさし指を当て考え込む仕種で見上げ、瞳を何度も回して、頷きながら言葉を紡いでいる。
「その一度きりには、理由があってな・・・俺達で契約を全部取り消した」
「えっ!?」
「俺達A.N.Jellで契約そのものを無かった事にしたんだ」
驚くミニョの隣でシヌが、静かにテギョンの言葉を引き継いだ。
「えっ、でも放送は、されましたよね」
シヌを振り返るミニョは、きょとんとした顔で、訊ね返している。
「ああ、あの一本、あの一度きりという約束で、契約金も必要以上は全て返して無かった事にした」
シヌの言葉の後をまたテギョンが継いで、ミナムは俯いて空になったグラスを見つめ、ジェルミも項垂れている。
「それは・・・」
「それは、俺から話します」
ソンジュンが、苦い顔でテギョンの後ろから声を出し、ミニョは、覗き込むようにソンジュンを見ると、溜息を吐いたソンジュンが、ジョンアの膝を叩いた。
「告白の件、話したんだろ!?」
「ええ、わたしだって言ったわ」
「へぇー、本当にあんたなんだ」
ミナムの驚きの声にソンジュンがまた渋い顔をすると試したのかと聞いている。
「いいや・・・驚いたのは、本当だよ!なぁ、ミニョ!!さっき心臓が止まりそうだったろ!?」
「えっ、あ、えっええ・・・」
「そういうこと!」
ミナムのとりとめのない話にきょとんとし続けているミニョは返事をしながら胸を抑え、ソンジュンは溜息を吐いて続けた。
「コ・ミニョssiという女性を俺が見たのは、その時が初めてです!ジョンアから話は、聞いてましたから、もっと、こう、何ていうかあどけない子供っぽい感じの女性だと思ってました・・・でも・・・実際に撮影が始まった時の彼女の姿に感じるものがありました」
「感じるもの!?」
テギョンの瞳が、細められ、面白くなさそうに唇を尖らせると僅か後ろにいるソンジュンに振り返りこそしなかったが、また空気が不穏になりかけ、すかさずミナムが止めに入った。
「そこ、突っ込まない!!」
「惚れたという事でしょうか」
それでも、ソンジュンの余計な一言が続いた事に今度はミナムが、不満そうに膨れて睨んでいる。
「まぁ、それで、次の契約も彼女でいけないかと父に打診したんです・・・でも・・・でも姉の事が原因でその話も出来なくなった」
ミナムの睨みに不適な笑みを返したソンジュンは先を続け、けれどシヌが、横から言葉を攫っていった。
「潰した原因はね・・・俺なんだ」
「シヌオッパですか!?」
「ああ、その頃、俺単独のCM契約があってね、それの相手役が彼らのお姉さんだった」
「はぁ・・・」
シヌの静かな言葉にミニョは、心許ない返事を返し首を傾げている。
「事件というのは・・・」
「シヌヒョンが、怪我をさせられたのさ」
テギョンが言葉を継ごうとしたが、ミナムが後を攫い、テーブルに置いてあったグラスから水を飲み、トンと軽い音を立てて、テーブルに置いた。
「へっ!?」
「お前、知らないよな・・・」
ミニョを見るミナムは真顔で、いつもふざけているミナムのそんな顔を見るのが久しぶりなミニョは動揺を隠せず、喉を鳴らして何度も頷いている。
「俺だって必死に隠したよ!!」
黙って聞いていたジェルミもミニョを見ていた。
「ミニョに知られたら、動揺して、歌手デビューも控えてるのにそんなのそっちのけでヒョンの心配ばかりするだろうし・・・引退するって言いかねないって、皆で話し合ったんだ」
ミナムが、シヌではなくテギョンに視線を移した事でミニョもそちらに視線を移すと唇を動かしたテギョンと視線が絡み合いオッパですかとミナムに聞き返した。
「そ、シヌヒョンが怪我をしたのは、ヒョンを庇ったから!あの時のシヌヒョンの剣幕ったら、誰の事考えてたのかは・・・一目両全だったけどさぁ」
「まぁ、ミニョの事・・・だよな・・・」
ミナムのうっすら笑いながらの軽口にシヌも自嘲的な笑みを零し、右手を撫でている。
「そうだよねー、ヒョンの心配してる様に周りには見えただろうけど、実際は違ったよね・・・」
「ああ、ミニョの心配をした・・・だから、許せなかった」
俯いたまま語るシヌの表情は見えないが、低い声には、僅かに怒りが、混ざっている。
「姉に詰め寄ったんでしょ」
ソンジュンが溜息混じりに言った。
「そうだ」
「こちらが悪かったんですから、仕方がないと思ってます」
ジョンアと顔を見合わせ、ふたり共に唇を噛締め苦い顔をしている。
「あのー・・・良く解りません」
左右に何度も首を傾けて考えこむミニョは、スッと顔を上げ、テギョンの顔を覗き込み、次いでシヌ、ミナム、ジェルミと視線を移し、ジョンアとソンジュンも見て、頬に手を当てると、テギョンが、ガタッと椅子を引いてミニョの肩を抱き、引き寄せる様に近づいた。
「こいつらの姉が当時交際をしていた相手が、逆恨みでヒョンを襲おうとしたのさ!」
テギョンの態度にニヤニヤしながらミナムが答え、その表情にミニョがテギョンをちらっと見ている。
「それで、シヌが、俺を庇って怪我をしたんだ」
「えっ!?」
「シヌが手袋ばかりをして仕事をしていた時期があっただろう」
「ギターも弾けなくて・・・もしかしたら、そのまま弾けなくなってたかも」
「まぁ、それは・・・問題なかったけどね」
過去の事だからなのか軽い口調で話すA.N.Jellに聞いているだけのミニョは、シヌが撫で擦る手を見つめ不安そうな表情をしたが、テギョンの手に力が入り大丈夫だと言ってる様に肩に触れている指先が何度か動かされた。
「姉さんの交際相手が、ちょっとした勘違いから起こした事件でしたからね」
「まぁ、だから、契約そのものには、本当は影響が無かったんだが、こちらが出した条件もあったからな」
「条件!?」
何ですかと聞こうとしたミニョに、テギョンが、回した腕で耳に触れ悪戯をしているせいで、小さく声が漏れ、不満そうに隣を睨むと、周りの空気がそれにつられる様に緩やかになっいる。
「姉が専属だったというお話をしたでしょ」
ジョンアが、ミニョを覗き込むように前に出てきて言葉を紡ぎ、ミニョもそれに頷いた。
「CM契約は当初A.N.Jellだけの筈だったけど、お前の歌手デビューに併せた売り込みの為にお前を使わせてくれと事務所として条件を出した」
「それで、姉がELのCMから降りたんです」
「何でオッパが恨まれるのですか!?」
「その条件を決めたのが俺だからだよ」
グラスの水を取ろうとしたテギョンだが、伸ばした指先に躊躇いが見え、ミニョが膝に置いていたバッグからペットボトルを取り出して差し出している。
「ミニョの仕事の管理を全てファン・テギョンが行うっていうのは、モデルデビューをした時に事務所として公表した事だ!テギョンの了承のない契約は受けないし、基本的に単独の仕事は請け負わないってな」
シヌが、そう言って、ソンジュンを見るとそこに居たのかと訊ね、頷いたソンジュンは、ジョンアと顔を見合わせて、キム・ユアンが居ましたと言ったのだった。
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こんばんわ~概要はみえたかなぁ(^^;「事件なじょなじょ」解決までもすこーし続きまーす(ToT)/
次回を待っててねー∑ヾ( ̄0 ̄;ノいつもありがとうございます(*^▽^*)
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byアメーバピグ |
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