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「大丈・・・夫・・・ですか・・・」
「あっ、えっと・・・は、はい・・・大・・・丈夫・・・です」
渡された缶ジュースを受け取って、一口、口にしたミニョは、心配そうに顔を覗き込んでいるジョンアを缶に口をつけたまま瞳だけで見上げ首を傾げてから冷静になろうと深呼吸を繰り返していた。
胸に当てた手を何度か上下に擦り、深い溜息を吐くと、もう一口ジュースを口にして、今度はジョンアをマジマジと見ている。
「ええとっ、ジョンアさんが・・・キム・ユアンssiなん・・・ですか!?」
戸惑いながらもジッと瞳を見て、真っ直ぐに見ているミニョの大きな瞳にジョンアも動揺を見せ、声を出すこともせずに何度も頷いた。
「えっと、アフリカで、お会いしたのはジョンア・・・ssiって事ですよね」
確かめる様に一言一言噛締め、ジュースの缶を擦りながら視線を落とし言葉を紡ぐミニョは、ジョンアの同意を求める様に床に逸らした視線をまた上げている。
「はっ、はい!!そうです・・・」
「告白を・・・してくれたのは・・・」
「わっ、わた・・・いえ、僕です」
スッと背筋を伸ばしたジョンアは、姿は女性だが、言葉と共に男性の様にキリッとした態度でミニョの前に立ち、僅かな微笑を浮かべて、ミニョを見下ろし、その瞳を覗く様に見ていたミニョもやがて笑顔を浮かべると、そうですかと頷いている。
「ふふ、懐かしいです」
「覚えていらっしゃいますか!?」
ミニョの偲ぶ様な笑顔にまた女性の様に姿を作ったジョンアが、膝を曲げると驚いた様な表情のミニョが、缶ジュースを持ち上げて口元を隠しクスッと笑った。
「なっ、なんですか!?」
「いえ、そういえば、ユアンssi、子供達にからかわれてたなぁ・・・って」
「えっ、あっ、ええと・・・そ・・・れは・・・」
恥かしそうに両手を口元に当てたジョンアは、目を閉じて頬を緩めるとそうでしたねと咳払いをしている。
「揶揄かわれた私を助けてくださいましたよねっ」
真摯な瞳でミニョを見つめたジョンアは、嬉しそうに笑っていて、そんな表情にミニョは首を傾げた。
「ふふ、貴女らしいですね・・・覚えていないのですね」
そう言って、懐かしむ様に天井を見上げたジョンアに恥かしそうに笑ったミニョがすみませんと小さく謝罪するとクスクス笑ったジョンアが良いですと言った。
「わたし、あの当時、既に女性を愛せない事を知っていたのです・・・」
唐突に真剣な眼差しと表情で告白を始めたジョンアは、くるっと後ろを向き、ミニョはハッとした表情で背中を見つめて床に視線を落とした後、スッと腰を引いて、居住まいを正した。
「ふふ、当時、わたし、ほんの少しだけ、迷ってました・・・男性に生まれながら、女性を愛せない・・・愛というものを感じる事が出来るのが同じ性別の男性だけで・・・自分は・・・少し・・・その、おかしいのかも知れない・・・とそう思ってました」
ミニョを振り返って笑顔を零したジョンアは、真剣な表情で黙って聞き入るミニョの座るベンチを指差し、頷いたミニョの隣に腰を下ろしている。
「ボランティアに出かけたのは、家に・・・この国に居たくなかったからでしてね」
ミニョと出会ったのは、そんな時だったと話すジョンアは、モデルになる経緯を話し始め、そのきっかけが、ミニョだったと告げた。
「えっと・・・わ・・・たし・・・」
「ええ、アフリカで、A.N.Jellのお話をしてくれたでしょ」
「ああ、そういえば・・・はい・・・オッパの夢のお話をしましたね」
顎に指を当ててミナムの事を考えたミニョの隣で、クスッと笑ったジョンアは、星の話もねとおどけるとミニョの頬が途端に赤くなっている。
「あっ、ああ、ええっと・・・その・・・」
「ふふ、覚えてます・・・嬉しそうに笑って、わたしの告白をまるで聞いて貰えなかったから・・・」
「あっ・・・すみません・・・」
膝に掛かるスカートを両手でぎゅっと握り、体も小さくして謝るミニョは、下唇を僅かに噛んで恥かしそうに俯いた。
「ふふ、良いのです!あれでわたしも吹っ切れました」
ミニョの姿を見つめるジョンアは、可愛いですねと呟いて、それが益々ミニョを赤くさせている。
「真っ直ぐに好きな人の事を話すあなたの姿を見て、わたしも・・・思うままに生きてみよう!と、そう思ったんです」
「えっ、それって・・・」
「ふふ、家が、ああいう仕事でしたからね・・・姉もモデルをしていた・・・会社の新商品をPRする為に安くモデルを遣えるというのは、父にとっても助力になってたんです・・・それに人気が伴えば、自然と売り上げも伸びる・・・だから、姉の我儘に苦い顔をしながらも付き合ってました」
それが、嫌でしたと話すジョンアは、渋い顔をして薄く笑ったが、すぐに真顔でミニョの方に体を向けてふたりの間に手を付いた。
「コ・ミナムに近づきたいなって思ってたんです!」
「えっ!?オッパ!?」
ミニョの驚きの声に首を振ったジョンアは否定の意味を表している様でふふと笑うと貴方ですとミニョを見た。
「!?わ・・・たし・・・」
「ええ、夢の世界だったのでしょ!夢の一ヶ月!それで星も手に入れたのでしょう!?」
「えっ!?あ・・・ああ、えっと・・・」
ジョンアの言葉にミニョは、入れ替わりの一件を思い出しているのか、少し表情が硬くなったが、ジョンアは、それ以上その話に触れる事は無く、ミニョは苦笑いにも似た笑みを零している。
「ふふ、貴方の事はね・・・忘れた事が、ありません!わたしが唯一、この世で、もしかしたら愛せるかもしれないと思った女性です!あの時、この機会を逃したら!って強く思いました・・・でも・・・貴方には、既に思ってる相手がいて、その人以外は見ていなかった・・・それがまた・・・相手が悪いというか・・・トップスターでしたからね・・・」
「オッパは、ずうーっとスターです!!!」
誰もいない正面に向かって今もと両の親指を突き出して誇らしげな表情をで嬉しそうに力強く笑ったミニョに一瞬、呆気にとられた表情でポカンと大きく口を開けたジョンアが、口元を隠すと大きく吹き出している。
「なっ、なんですかぁ・・・」
「いえ、やっぱりお好きなんだなぁと思って・・・」
ミニョに背中を向けて、向けた背中を小刻みに震わせるジョンアにきょとんとしたミニョは、直に頬を膨らませていった。
「もっ!そんなに笑わないで下さい!!」
「はっ、は、ははは・・・すっ、すみっません・・・」
涙を流して目元を拭ったジョンアは、膨れ続けて腰に手を当てたミニョに口元を隠して向き直ったが、その顔を見て、また吹き出しそうな仕種を繰り返し、ミニョが更に頬を膨らませている。
「う・・・ん、もう!ジョンアssi!!!」
「はっははは・・・いや、当時も・・・そんな顔っ・・・」
当時という言葉にミニョの首が横に曲がったが、何度か深呼吸を繰り返したジョンアが、大きく呼吸を沈め、息を吸って真顔になった。
「失礼しました・・・、当時も星の話をしてるあなたは綺麗でしたよ」
「!」
「ふふ、満点の星は、手が届かないけど、たった一つ手に入れた星は、自分みたいな者に手を伸ばしてくれた!ってそうおしゃってましたね!叶わぬ大それた望みと思ってたのに向こうから手を伸ばしてくれてその手をとっても良いと言ってくれたと・・・」
「ええ、輝く星を遠くから見てるのが精一杯だと思ってました」
口角のあがるミニョの微笑みにやはり嬉しそうな表情を浮かべたジョンアが、そうですかと頷くと、わたしもと続けた。
「わたしも叶わぬ望みと思っていたんです!」
そう言った、ジョンアがミニョを見つめて次の言葉を紡ごうとした時、ミニョの荷物を入れていたバッグからA.N.Jellの楽曲が流れ始め、携帯が激しく震えたのだった。
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byアメーバピグ |
休んでいる間にありがとう(^^)/
ごちそうさまでした。