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「お前、知っているんだろ」
子供達を遊ばせているユンギの傍らに立ったシヌは、何の事と恍けるユンギにミニョとスポンサーの関係と子供たちを見つめながら、さらりと言った。
「ああ、そのことか」
「あのふたりが、兄弟なのは良いとして、もう一人居るって、さっき言ってたけど」
もしかしてとシヌが、杞憂を怪訝な顔で訊ねると、ユンギが頷いている。
「やっぱり」
納得顔で頷くシヌにユンギが、薄く笑った。
「昔・・・の事、だよね」
「ああ、けど、それが原因で、あの会社からのオファーを全て断わってた筈だぞ」
「そうみたいだね」
シヌの言葉に苦笑いをするユンギは、遊びに夢中の子供達を見つめて手を振りながら続けた。
「先代の社長は、ソンジュンの親父だけどさ、あの一件で、取れるはずの利益が、全てすっ飛んだと嘆いてたよ」
「お前が・・・口を利いたのか」
「ああ、一応、俺の大学の後輩に当たるんだ!親父さんにも頼まれてたし!それに今、あいつの会社もブランドイメージが強くなったからね!悪い仕事じゃないと思ったんだよ」
ビーチでボール遊びをする子供達に声を掛けながらシヌと会話を続けるユンギは、少し重い表情をみせ、トーンも落としている。
「あいつらの姉さんになるけど・・・あいつらとは結構、歳も離れてるからな・・・当時、一人娘の我儘し放題で、何でも思い通りになると思ってたんだよ」
「今は・・・」
シヌが、横目でユンギを見つめ、渋い顔をして聞いた。
「あの一件の後、親父さんが、国外追放をしたんだ」
「つい・・・ほう・・・」
「ふふ、古い家だからね!そういう事もあるのさ!二度と戻るなと結婚させたんだ・・・今は、アメリカで暮らしてる」
そうかと頷くシヌは、テラス席に座って対峙しているテギョンとソンジュンを眺め、別な仕事があるのかと聞いた。
「ああ、ソンジュンが、勧めようとしてる企画!」
ははと笑うユンギは、俺もだけどとシヌを見つめテギョンには、まだ内緒だと唇に指を当てている。
「おっまえ・・・」
「ふ、悪いけど!これはビジネス!お前達が何と思おうと俺はそっちが優先!折角ミニョssiが復帰するなら、彼女も元々携わってる事だし!それを使わせてもらう!それに彼女のイメージは、今は良い母親だろ!それを使わせて欲しいんだ!リンssiが、あんな風に育ってるのも!テギョンがあんなに穏やかなのも!そこはやっぱり彼女の力じゃないのかな!」
そうだろとシヌを振り返るユンギは、代表としての顔を覗かせていて、その瞳を見つめているシヌは、ああと深く頷くとお前には適わないなと言っている。
「俺に適わないのは、シヌが、テギョンに遠慮してるからだろ~お前だって唯のファンじゃ無かったんだろ!」
意味深に深いところをついて来るユンギにシヌの表情は、僅かに驚き、歪められたが、すぐに鼻で笑った。
「お前、痛いところつくよな!これでも新しい恋に真剣なんだぞ!」
「ふ、そんなの知ってる!お前とユナさんだっけ・・・お似合いだったし!」
ふたりで顔を見合ったシヌとユンギは、ひとしきり笑い合うと、そうかと振り返ったシヌが、ミニョは、知らないからなとテギョンを見つめて言った。
「うん・・・それもソンジュンには、伝えてある!多分、テギョンの事だから何も言わずに水面下で処理をしたんじゃないかと思ってさ」
「ああ、あの件は・・・俺達、全員でやった」
「A.N.Jellでミニョssiを守ったって事!?」
さして驚いている風も無いユンギにシヌもニヤっと笑って答えている。
「ふ、だってそうだろ!そうしなければ、ミニョのデビューそのものが無くなってた」
「そうらしいね」
ユンギの答えにやっぱりなと言ったシヌは、へへと笑うユンギにどこから聞いたと訊ね、業界と答えたユンギにそうかとクールに頷いた。
「まぁ、でも、あの時、一番やっきになったのは、実は、テギョンよりミナムだったけどな」
足元の砂を蹴る様な仕種をしたシヌは、遠くを見つめながらそう口にし、思い出す様に瞳を閉じている。
「シヌじゃ、ないんだ!?」
そんなシヌの表情にきょとんとしたユンギが、首を振りながら顎に手を添えへーと続けた。
「俺が!?どうして!?」
「いや、俺の聞いてた話だと・・・お前が一番怖かった!って」
どこからの情報だよとユンギに片目を閉じたシヌは、本人かと聞きながら舌を出して頷くユンギに呆れた様な表情を作っている。
「ふ、あの当時、まだミニョへの想いを捨ててなかったからな!傷付ける奴は、例えテギョンでも許せなかったよ」
遠くを見つめるシヌは、あーあと清清しい笑顔を零して、大きく伸びをした。
「シヌってやっぱ怖いんだねー」
クスクス笑いながら、シヌの真似をする様に両腕を上に挙げて背伸びをしたユンギが、シヌの顔を見つめ、視線を交わしたふたりは、あはははと大きく笑い出している。
「お前の方が、怖いだろっ」
「そんな事ないよ!」
「ったく、呆れる代表だな!」
「だから、ヒジュンがいつも泣いてるのかもねー!」
「ふ、バンドの方も順調か」
「うん、配信だけだけど、それなりに楽しませて貰ってる」
「良い事だな!お前の楽曲も埋もれる事がない」
「ふふ、歌いたいって言ってくれる子がいたからね」
「お前・・・は、新しい恋をしないのか」
「恋・・・ねぇ・・・」
遠くを見ながらおどける様に笑ってみせるユンギに呆れ顔をしたシヌは、ジタバタしてみるのも悪くないぞと微笑み、何なら紹介するぞとユンギの横を通り抜け、子供達に声を掛けたのだった。
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