ふたりを送り出して、家事を一通り済ませたミニョは、携帯を取り出すと、スケジュール表を引っ張り出して今日の予定を確認し、指先で捲るページに赤い印を見つけ来週ねと呟いて、それをテーブルに置くと寝室に向った。
寝乱れたベッドのシーツを直し、テジトッキの座る窓辺に近寄ると頭に手を掛けて、リンのくれたピンを外して白い耳にそれをつける。
「ふふ、あなたにもお裾分け」
そう言いながら、テジトッキの頭を軽く撫で、向かいのクローゼットに入って行き、カタンと音をさせてクローゼットの一つを開けると色取り取りのワンピースが吊るされている中からホワイトイエローのスリーブレスの物を取り出し、胸の前にあてがい、頷いて、扉を閉め、隣の引き出しを開けて薄手のカーディガンを取り出し、着換えを始めた。
鏡の前に立って、裾を摘み襟を直すとふふと笑ってリビングに戻る。
一人だけのリビングは、朝の陽射しを受けた窓から光が差し込み庭に植えられた木々の影が風に揺れる様子を部屋の中に描いてその間を通って、足取りも軽くダイニングに向ったミニョは、携帯を再び手に取ると、カウンターに置かれたカバンを椅子に下ろして、用意していた一人分のお茶を飲み、携帯を見つめた。
待ち受け画面には、リンとテギョンが頬を寄せ合い満面の同じ笑顔を零している写真が写し出されていて、それを見ているミニョは、ふふっと嬉しそうな笑みを零している。
ふと、見つめていた携帯の時計を見たミニョは、アレッと首を傾げるとどこかに電話を掛け始めた。
(ああ、シスターすみません)
ミニョが、問い掛ける間も無くマ・室長が先に謝ってくると渋滞に嵌っていると事情が説明され、そうですかと呟いたミニョは、どこですかと聞いた。
(公園の少し手前なんです)
「通りのですか!?」
(ええ、リンと良く遊んでいる公園です)
それならと立ち上がったミニョは、カバンを肩に掛けると携帯を耳に当てたまま玄関に向かい、マ・室長に待ち合わせ場所を指定して待っててくださいと言って家を出るのだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「シスターここです!」
大きな声でミニョを呼ぶマ・室長に驚いた顔をして振り返ったミニョは、サングラスを掛けて黒いスーツを着たマ・室長の姿にいつかの怪しさを思い出しクスクス笑いながら近づいて、こんにちはと言った。
「何で笑ってるんです!?」
ミニョの止まりそうもないクスクス笑いに不思議な顔をするマ室長は、まるで、スターの様に腕を振ってサングラスを外し、きょとんとしている。
「あはっ、すみません!初めてお会いした時の事を・・・」
笑いながら、カバンからハンカチを取り出したミニョは、それで、目元を擦り、僅かに零れていた涙を拭った。
「涙まで流して、シスターわたしと仕事出来るのが嬉しいんですね!」
そんな事を言いながら車の助手席を開けたマ・室長に笑いを何とか止めて車に乗り込んだミニョは、否定も肯定もせず、口角をあげている。
「今日は、どこで!?」
ミニョが、打ち合わせの場所を尋ねると車を走らせ始めたマ・室長がいつものホテルですと言った。
「昼食を摂りながらと申し出があったので」
あちらも忙しいのでしょうとマ・室長が笑ったが、そうですかと応えるミニョは、少しだけ不安そうな顔を覗かせていて、黙ってしまったミニョにマ・室長が首を傾げている。
「どうかしましたか!?」
「あっ、いえ、その、大きな会社ですよね」
ミニョは、打ち合わせの相手について考えている様子で、どんな方ですかと訊ねた。
「そうですね、まだ、お若いですよ!先代の後を継いだという事なのでユンギssiと似たような感じですかね」
「社長がいらっしゃるのですか!?」
「ええ、そう聞いてます」
そうですかと溜息を付くミニョにますます首を傾げるマ・室長は、前を見たまま何か心配ですかと訊ね、マ・室長を見たミニョは、朝方のテギョンとの会話の事を話し始めるのだった。
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