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「タイアップなんでしょ」
「ああ、そう聞いてる」
「レコーディングもするの!?」
「ああ、ヒョンの事だからその辺は、抜かりなくやるさ」
「そんなの解ってるわよ」
「なんだよ、俺の事よりヒョンを良く解ってる様な口ぶりだなぁ」
「そりゃそうでしょ!あっちは単純、こっちは不可解!あっちの方が解りやすいわよ」
「ありゃ、褒められてる!」
「褒めてないわ」
「愛してる」
「愛してないわ」
「冷たいなー」
朝の食卓でまるで漫才の様な夫婦の会話が繰り広げられ、同じ卓を囲みながらも毎度の事なので、綺麗に無視して間に座っている孫の面倒を見ているヘイのパパとママは、ウォンとスヨンにご飯を食べさせて笑っている。
「パパ、ママ!今日から一週間泊り込みになるの!パボなミナムをお願いね」
ダイエットドリンクを口にするだけのヘイにご飯も食べなさいというママは、手を振って否定するユ・ヘイにミナム君を見習ってと不満そうで、パクパクとご飯を口に運んでいるミナムを睨み付けるように見ているヘイは、あっちが特別とこちらも不満げに唇を突き出した。
「解ってるわよ、ミナム君なら大丈夫だから、それよりもウォンとスヨンの心配をしたらどうなの」
朝からきゃっきゃと騒がしくじゃれあってご飯を食べている双子を見つめたヘイは、大丈夫よと軽い返事で、ミナムがいるからと言っている。
「その子達、ミナムさえいれば何とかなるのよね」
軽い返事を返すヘイにパパが呆れた様にどっちが母親だと聞いた。
「わたしに決まってるわ!なによそれ!酷いわ!私がちゃんと生んだのよ~」
「お前よりも育児が上手いって事だよ!」
「もー」
不満そうなヘイを横目に笑っていたミナムは、思い出した様に口にした。
「そうだ、ヘイ!アレ出してよ!」
「えっ、ああ、そうか!ちょっと待ってね」
パパが、何だいと聞く間に隣の部屋に行ったヘイが、カーネーションの花籠とプレゼントの箱を持って戻ってきて、立ち上がったミナムと横に並んで二人の前に差し出した。
「お父さんお母さん日頃からありがとうございます」
ミナムが、挨拶をして、腰をきっちり曲げている。
「まぁ、ありがとう!」
受け取ったヘイママは満面の笑みを浮かべていつもありがとうとミナムに礼を言った。
「いえ、俺の方こそありがとうございます!こんな仕事なのでウォンとスヨンの事もお願いしてばかりで」
それは楽しいから良いのよとヘイママが言うとパパもああと大きく頷いていた。
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「それで・・・何があるんだ」
ヘイの車の助手席に乗り込んだミナムが、車に乗り込むのを待たずに訊ね、ああ、と返事をしたヘイがミニョの事よとシートベルとを締めながら言った。
「ミニョが復帰するなら一人雇ってくれないかなと思ってたのよ」
「雇う!?」
車を発車させたヘイが、左右を見回してハンドルを切りながら答え、目を細めるミナムは、何だと聞き返している。
「専属スタイリスト・・・必要でしょ」
ヘイが、復帰するミニョのスタッフについてミナムに訊ねたのは、記者会見をした後で、仕事はテギョンが決める為、スタッフについても当時の顔なじみが、周りを固める事になっていたが、A.N.Jellのスタッフと掛け持ちをしている者も少なくなくて、コンサートの準備をしながら、撮影やテレビ出演、雑誌の取材とやることは目白押しで、ミニョも復帰をしたばかりとはいえ、既に仕事の依頼が目白押しになりつつあった。
「ああ、だけど、コーディーヌナがいるよな・・・」
「あんた達の専属でしょ!」
ヘイが、呆れた様にミナムに膨れてみせると怒った顔も好きとウインクするミナムに真面目に聞いているのとヘイの不満が漏れて、聞いてるというミナムは、専属ねェと気だるい声を出している。
「ミニョが、辞める時にね!もしも復帰するなら連絡を欲しいって言われてたのよ」
忘れてたわと呟くヘイは、ボディガードにもなるかもねと信号で止まった運転席でミナムにウィンクを返している。
「会見を見たのか」
「ええ、そうらしいわ、アレを見て連絡が来たのよ」
走り出した車の中で、目を閉じたミナムが、助手席で背中を倒すように仰向け気味に片目を開けてヘイを見ると男かと聞いた。
「身元は、確かよ!腕も保障するわ!けど難はあるかもね」
わたしのスタッフだったのとヘイが答えて、今は海外で仕事をしている、その男性の事を話し始め、一通り話を聞いたミナムは溜息を吐き出している。
「男かぁ・・・ヒョンが何て言うかなぁ」
「ミニョに害はないわよ」
「けどなぁ、男だろ」
「あんたの心配も判るけど、とり合えずCMの撮影あるんでしょ!」
連れて行くから日にちを教えてよと言ったヘイは、A.N.entertainmentの前の道路で車を止めた。
「言い切れるか」
ドアを開け、右足を歩道に乗せているミナムは、体を半分外に出しながらヘイに聞き、ドアを開けたまま背筋を伸ばすと事務所の前にいるファンが、ミナムに気付いて黄色い悲鳴をあげていて、ファンに背中を向けているミナムは、ふっと笑うとくるっと振り返って、車のルーフに肘を付いてそちらに手を振っている。
「言い切れるわ!どちらかというと危ないのは・・・」
ドアを開けたままヘイと会話を続けるミナムに早く閉めなさいよと言っているヘイが、腕を伸ばしてミナムの足を軽く叩き、持っていたサングラスをかけたミナムは、バタンとドアを閉めるとウィンドウ越しにヘイを見て、ファンの声にかき消された答えを聞いて、ああと頷くとヒョンに聞いてみると言い、頷いたヘイも宜しくねと言いながら、ロケに出発していったのだった。
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