「良かったのかい」
公園に辿り付くなり、両手を拡げて走り始めたリンの後を追って、悠然と歩くギョンセに近所の住人だろうか、割とラフな洋装の男性が軽く頭を下げ、笑顔を返してすれ違った背中を見つめ、その先を行くリンを見つめて、薄く楽しそうな笑顔を零すと数回頷いて去っていった。
「な~に~」
ギョンセの問いかけにベンチに両手を付いて靴を脱ぎ始めたリンは、そこによじ登ると立ち上がって公園の中から見える建物を見つめ、あそこだよねとギョンセに指を指して頷いたのを見るとあそこなんだぁとゆっくり腰を降ろしている。
「ミニョと一緒に眠れなくてさ」
リンの隣に腰を降ろし、明日の公演は、ベートヴェンがメインだからと言ったギョンセは、リンにはまだ早いねと言って頭を撫でて笑っていて、アッパにも言われたと少しだけ不満そうに唇を尖らせたリンが、帽子に手を掛けて足をぶらぶらと揺らした。
「今日はハラボジと寝る~」
「そうか、そうか、わたしも一人寝は淋しいからね」
ベッドは、広いからねとウィンクしてみせるギョンセを見上げて頷くリンは、テジトッキもと言いながら不思議な顔をしている。
「ハルモニは、何で一緒じゃないの~」
「ああ、他の用事があってね・・・今は、ヨーロッパにいるよ」
足を組んで周りの景色を見つめながら気持ち良いねと呟いているギョンセは、何を考えているのか、ふと目を閉じると思い出した様に小さく笑い、それが聞こえたリンは、更に不思議な顔をした。
「会いたかったのに~」
「ふふ、彼女も会いたがっていたよ」
ギョンセもリンも笑顔を交わして次は絶対と顔を見合わせている。
「次の公演も呼んでねー」
「ああ、でも、次は、韓国になるかもしれないんだよ」
ベンチの背凭れに肘を乗せて指先を組みながらリンの方に体を向けたギョンセは、やはり公園の中を歩いている人に軽い会釈をしているが、リンはそれに気付いてはいなくて、目を輝かせたリンは、片足をベンチに乗せるとギョンセの方に体を向けた。
「チンチャ~(本当)!」
大きな声で、ベンチに両手を付いてギョンセを見つめたリンの後ろを丁度通りかかった老婆の連れた子犬が、驚きキャンと吠えてそちらにちらっと顔を向けたリンは、子犬を見てからやはり驚いている老婆にsorryと小さく言って舌を出している。
「ああ、凱旋ってとこかな」
リンの仕種にクスッと笑ったギョンセも老婆に謝罪をすると小さなリンの様子に笑顔を零した老婆が、クスクス笑って通り過ぎて行った。
「わーい!それなら、全部の公演行けるかなぁ」
大きな声を出した事にギョンセに舌を出して見せ、やっちゃったーと言ったリンは元気だからなと言ったギョンセは、またリンの頭に手を乗せている。
「次もチケットは、贈ってあげよう」
「うん!」
頷いたリンは、脱いでいた靴を履くと、前の花壇のレンガの仕切に足を乗せ、僅かな幅をまるで平均台の様にして遊び始め、リンの遊びに笑顔を浮かべて、前に屈み膝に乗せた両手の指先を絡めて見つめていたギョンセが、少し真剣な表情で声を掛けると振り返ったリンは、両手を水平に拡げて倒れそうになる体のバランスを取り、笑いながらトンと飛び降りた。
「バンドの方はどうなんだい!?」
ギョンセの表情に首を傾げたリンだが、空を見上げてから頷くと満面の笑顔を向けている。
「あのね、アッパが、僕の曲をアレンジしてくれてるの!『約束』はね、3人で演奏するって決めたからそれは絶対やるー」
そうかと頷いたギョンセは、組んだ指先の親指を顎にあて、頬を数度擦るとそこに顔を乗せた。
「ギターを演りたいのかい」
花壇の真ん中には、大きなリンゴの木があって、それを見あげているリンの背中に声を掛けるギョンセは真剣な表情で訊ねている。
「うーん、まだわかんない、けど、僕どっちも好きだよ~」
見上げるリンゴの木の中にさえずる鳥を見つけたリンが、歌ってるーと指を指すと覗き込んだギョンセがああと頷き、いい声だと目を閉じるとオンマの声みたいと振り返ったリンに春の様な声だからねとギョンセが笑い、その言葉に満面の笑顔を浮かべたリンは、トタトタッと隣に座り直した。
「それにね、ヒョン達も・・・えっとね、ヒジュンおじいちゃんとユンギヒョンの・・・」
子供バンドの仲間の説明をしようとしたリンに知ってるよと笑顔を向けたギョンセが、ジュンシンとユソンだろと名前も告げた事にリンの表情が驚きに変わリ、どうしてと訊ねている。
「ヒジュンは、古いチング(友)だし、ジュンシンのハラボジもね、私達の親友だったんだよ」
空を見上げて、行こうかと言ったギョンセにうんと頷いたリンが、立ち上がって、ギョンセの右手を掴んで後ろ歩きをしながら数歩歩くとふふっと笑って隣に並んでいて、なんだいと訊ねたギョンセが、不思議な顔をしながらリンを見下ろした。
「ハラボジのてー!」
手と左手を上げ、見つめたギョンセに繋いだ手を両手で握り直したリンが、ふふっとまた笑ってアッパと同じ手だよーと言い、見つめていた手と繋いだ手を交互に見つめ、リンの言葉にそうかと笑顔を零したギョンセのそんなある日の午後だった。
公園に辿り付くなり、両手を拡げて走り始めたリンの後を追って、悠然と歩くギョンセに近所の住人だろうか、割とラフな洋装の男性が軽く頭を下げ、笑顔を返してすれ違った背中を見つめ、その先を行くリンを見つめて、薄く楽しそうな笑顔を零すと数回頷いて去っていった。
「な~に~」
ギョンセの問いかけにベンチに両手を付いて靴を脱ぎ始めたリンは、そこによじ登ると立ち上がって公園の中から見える建物を見つめ、あそこだよねとギョンセに指を指して頷いたのを見るとあそこなんだぁとゆっくり腰を降ろしている。
「ミニョと一緒に眠れなくてさ」
リンの隣に腰を降ろし、明日の公演は、ベートヴェンがメインだからと言ったギョンセは、リンにはまだ早いねと言って頭を撫でて笑っていて、アッパにも言われたと少しだけ不満そうに唇を尖らせたリンが、帽子に手を掛けて足をぶらぶらと揺らした。
「今日はハラボジと寝る~」
「そうか、そうか、わたしも一人寝は淋しいからね」
ベッドは、広いからねとウィンクしてみせるギョンセを見上げて頷くリンは、テジトッキもと言いながら不思議な顔をしている。
「ハルモニは、何で一緒じゃないの~」
「ああ、他の用事があってね・・・今は、ヨーロッパにいるよ」
足を組んで周りの景色を見つめながら気持ち良いねと呟いているギョンセは、何を考えているのか、ふと目を閉じると思い出した様に小さく笑い、それが聞こえたリンは、更に不思議な顔をした。
「会いたかったのに~」
「ふふ、彼女も会いたがっていたよ」
ギョンセもリンも笑顔を交わして次は絶対と顔を見合わせている。
「次の公演も呼んでねー」
「ああ、でも、次は、韓国になるかもしれないんだよ」
ベンチの背凭れに肘を乗せて指先を組みながらリンの方に体を向けたギョンセは、やはり公園の中を歩いている人に軽い会釈をしているが、リンはそれに気付いてはいなくて、目を輝かせたリンは、片足をベンチに乗せるとギョンセの方に体を向けた。
「チンチャ~(本当)!」
大きな声で、ベンチに両手を付いてギョンセを見つめたリンの後ろを丁度通りかかった老婆の連れた子犬が、驚きキャンと吠えてそちらにちらっと顔を向けたリンは、子犬を見てからやはり驚いている老婆にsorryと小さく言って舌を出している。
「ああ、凱旋ってとこかな」
リンの仕種にクスッと笑ったギョンセも老婆に謝罪をすると小さなリンの様子に笑顔を零した老婆が、クスクス笑って通り過ぎて行った。
「わーい!それなら、全部の公演行けるかなぁ」
大きな声を出した事にギョンセに舌を出して見せ、やっちゃったーと言ったリンは元気だからなと言ったギョンセは、またリンの頭に手を乗せている。
「次もチケットは、贈ってあげよう」
「うん!」
頷いたリンは、脱いでいた靴を履くと、前の花壇のレンガの仕切に足を乗せ、僅かな幅をまるで平均台の様にして遊び始め、リンの遊びに笑顔を浮かべて、前に屈み膝に乗せた両手の指先を絡めて見つめていたギョンセが、少し真剣な表情で声を掛けると振り返ったリンは、両手を水平に拡げて倒れそうになる体のバランスを取り、笑いながらトンと飛び降りた。
「バンドの方はどうなんだい!?」
ギョンセの表情に首を傾げたリンだが、空を見上げてから頷くと満面の笑顔を向けている。
「あのね、アッパが、僕の曲をアレンジしてくれてるの!『約束』はね、3人で演奏するって決めたからそれは絶対やるー」
そうかと頷いたギョンセは、組んだ指先の親指を顎にあて、頬を数度擦るとそこに顔を乗せた。
「ギターを演りたいのかい」
花壇の真ん中には、大きなリンゴの木があって、それを見あげているリンの背中に声を掛けるギョンセは真剣な表情で訊ねている。
「うーん、まだわかんない、けど、僕どっちも好きだよ~」
見上げるリンゴの木の中にさえずる鳥を見つけたリンが、歌ってるーと指を指すと覗き込んだギョンセがああと頷き、いい声だと目を閉じるとオンマの声みたいと振り返ったリンに春の様な声だからねとギョンセが笑い、その言葉に満面の笑顔を浮かべたリンは、トタトタッと隣に座り直した。
「それにね、ヒョン達も・・・えっとね、ヒジュンおじいちゃんとユンギヒョンの・・・」
子供バンドの仲間の説明をしようとしたリンに知ってるよと笑顔を向けたギョンセが、ジュンシンとユソンだろと名前も告げた事にリンの表情が驚きに変わリ、どうしてと訊ねている。
「ヒジュンは、古いチング(友)だし、ジュンシンのハラボジもね、私達の親友だったんだよ」
空を見上げて、行こうかと言ったギョンセにうんと頷いたリンが、立ち上がって、ギョンセの右手を掴んで後ろ歩きをしながら数歩歩くとふふっと笑って隣に並んでいて、なんだいと訊ねたギョンセが、不思議な顔をしながらリンを見下ろした。
「ハラボジのてー!」
手と左手を上げ、見つめたギョンセに繋いだ手を両手で握り直したリンが、ふふっとまた笑ってアッパと同じ手だよーと言い、見つめていた手と繋いだ手を交互に見つめ、リンの言葉にそうかと笑顔を零したギョンセのそんなある日の午後だった。
にほんブログ村