「お前達!」
ソリの傍らであちらも言い争っていたユソンとジュンシンが、互いの襟首を掴みそうな勢いで額をくっ付けあっていて、テギョンの勢いにバッと背筋を伸ばしたふたりは、共に腿に両手をくっつけてダイニングに向かって直立不動になった。
「何を言ったんだ!?」
テギョンが、もう一度訊ねると互いに顔を見合わせているふたりは、肘で突き始め、どちらが話すのかをもめ始めている。
「ちょっ・・・アッパ、聞こえてたでしょ!」
子供相手にとミニョが嗜めると子供だからだとへ理屈が返った事にミニョの頬が膨れ、だからなんだと睨みつけたテギョンは、リンを抱え直して、指を曲げた。
「ここに来い!」
戸惑いながら、それでも、テギョンに近づいてくるユソンとジュンシンを前にしてニヤっと笑ったテギョンは、それでとニヤニヤしながら聞いている。
「それで・・・って・・・なんですか」
ジュンシンが、ユンギの顔をちらちら見ながらテギョンに聞き返すとその視線にユンギに向かって目を細めたテギョンが、お前~と低い声を出した。
「別に良いじゃないか!せっかくの女の子だし!それに思った通り!やっぱりミニョssiにそっくりだし!だから家に頂戴!」
「ダメです!僕にだって権利はある!」
ユンギに先を越された事にユソンが大きく首を振っていて、ジュンシンは、ユンギを応援する様にガッツポーズをしている。
「権利って・・・お前達・・・」
心底呆れたという顔をしているテギョンは、キッときつい眼差しをユンギに向け低い声でふたりを指差した。
「ふざけるなよ~生まれたばかりの子供を捕まえて!それにお前、こいつらに何を吹き込んできたんだ!」
明らかにユンギが何事かを子供に吹き込んで来たと考えているテギョンは、怒り心頭でユンギを睨みつけている。
「えーとね・・・手を打つなら早い方が良いって、言ったかな~」
のんびりお茶を飲んでいるユンギは、テギョンの腹にくっ付いて成り行きを見ているリンと顔を見合わせるとねっとウインクしてみせる。
「手を打つって・・・」
前のめりにユンギに向かって歯軋りでも聞こえそうな程、苦い顔をするテギョンにきょとんとしているリンとクスクス笑ってフライパンを持ち上げたミニョは、背中を向けてお嫁さんですかと聞いた。
「「はい!!」」
元気に声を揃えて答えたユソンとジュンシンにキッと射殺しそうな眼差しを向けるテギョンは、お前達~と子供相手に飛び掛りそうで、抱き合って一瞬体を引きかけたふたりは、それでもテギョンに負けまいと顎をあげてその場から前に向かってジリジリと足を出している。
「無理に決まってるだろ!」
「アッパよりも有名になれば良いよー!」
ドンっとテーブルを叩いたテギョンとリンの声が重なり、驚愕に目を見開いたテギョンは、下を見て固まっている。
「はっ!?」
「えっ!」
「ほんとー」
「ああ、それなら」
間抜けな声と驚いた声と満足な声と納得した声が重なって、一斉に皆がリンに顔を向けた。
「アッパよりも有名になれば、許してあげるー」
にっこり笑ってユソンとジュンシンを見つめたリンに、下を見下ろしているテギョンは、口を開けたまま呆気にとられ、口元を抑えて笑いを堪えているミニョとユンギは、テギョンから顔を背け背中を震わせた。
「そりゃ勿論なるぜ!」
「それなら、僕にも出来るさ!」
ガッツポーズをするふたりにリンが、頷きかけたが、天井を見上げて、リンを呼んだテギョンに下に向かった首が、上を見上げている。
「おっ、お前、お前の妹だぞ!」
動揺してリンに向かって居なくなっても良いのかと聞いたテギョンは、リンの顔に手をあて、ギューッと軽く潰す様に頬を包んだ。
「びぇつうにぃ、オンマじゃないからどっちでも良いおー」
テギョンの手の上に手を乗せてそれを引き剥がす仕種をしたリンはテギョンを睨み、それでも笑顔を作って答えている。
「はっ!?」
「オンマ頂戴って言われたら嫌だけど、ソリなら別にどっちでも良い!ヒョン達ふたりとも好きだし!それに、すぐじゃないでしょ!もっともっと大きくならなきゃ、けっこんって出来ないんでしょ!それにヒョンのどっちかと僕が、ミナムとアッパになるって事でしょ~」
解っているのかいないのか、相変わらずのリンの発言に呆気にとられ、クスクス笑う大人たちを尻目に子供達は手を取って喜び合い、リンもにっこり微笑んで、テギョンの腹の上で両手を上げた。
「ふふ、残念ですねアッパ!味方が減りました!」
味方と言ったミニョにギロッと黒目を光らせたテギョンは、フライパンに卵を流し込んでいる背中に向かって、抑えながらも苦い声を出し、お前はと聞いている。
「わたしですかぁ、わたしはどちらでも!可愛い息子が増えるって事ですから~」
トコトコとダイニングをシンク側のカウンターに回ってきたユソンとジュンシンが、ミニョに頭を下げて宜しくお願いしますと言うとミニョは、クスクス笑いながら、ソリをお願いねと言い、それに頷いたユンギは、テギョンに向かって小さく舌を出し、膝に乗っているリンを忘れたかの様に怒り心頭でスクッと立ち上がり、テギョンから、かろうじて落ちる事を避け、首にぶら下がる格好になったリンは、ピョンと床に着地すると上を見上げアッパーと指を指した。
「僕の事も大事にしてよ!」
「してるっ!それより、俺は、絶対、反対だからな!」
リンの言葉に投げやりとも言える返事を返したテギョンに見上げる視線が物凄ーく不満そうで、唇を尖らせたリンは、トタトタとカウンターを回るとミニョの後ろに回って、その腰に手を回し、リンの頭に軽く触れたミニョは、出来上がった一つ目のオムライスをつまんでリンに齧らせ、美味しいと言ったリンに笑顔を返して、前に立つふたりに皆も食べてねと言っている。
「反対してもねぇ、いつかはそういう時がくるんだから」
お茶をすすり続けているユンギは、俺もご馳走になりたいですとミニョに遠慮なく注文していて、ちらっと横目で見ていたテギョンは、僅かにユンギを睨み、首を大きく振った。
「いつかでも!今じゃないだろ!」
「今じゃないから良いじゃないですか!ソリが可愛いって事ですよ!」
「はい!」
「そうです!」
ミニョが、フライパンに卵を流し込んでいるのを見ているユソンとジュンシンは、あっという間に出来上がっていくオムライスにカウンターに手を付いて覗き込みながら感嘆の声を漏らし、ひとり、例え様の無い怒りでイラついているテギョンは、皆が聞いてない事に大きな大きな溜息を付いて椅子に座り直している。
「ねぇ、アッパ~」
ミニョの腰に引っ付いたままのリンが、不思議な顔をするとギロッと睨んだテギョンの顔にヘヘッと笑ったリンが、お仕事は~と聞いた。
「仕事!?」
「ああ、そういえば、もう、お昼ですけど!アッパの分は・・・」
「こいつらの分はあるって言うのか!」
「そうですね~」
のんびり答えるミニョは、リンに冷蔵庫から卵を出してと言い、思い出した様にほうれん草がと手を併せ、リンの後ろから冷蔵庫を覗き込むとそれを取り出して満面の笑顔を作っている。
「オッパには、特別なお昼をあげます!」
テギョンの前に緑の野菜をつきつけ、楽しそうに口角をあげたミニョに顔を顰めるテギョンは、まぁ、良いかと立ち上がってソリのベッドに近づいていった。
「よく眠っているな」
「ええ、さっき、ミルクも飲んでくれましたし」
賑やかな空間の割によく眠っているソリに手を伸ばすテギョンの表情は、ふんわりと何もかも溶かしてしまいそうな程、柔らかく優しい笑顔が浮かんでいて、トコトコと近寄り両脇に立ったユソンとジュンシンの頭に手を乗せるといつかなと呟いている。
「いつか、お前達が女を守れるほど大きくなればその時は、考えてやろう」
暗に無理だと言っているテギョンにユンギとミニョが顔を見合わせて笑うとトタトタとテギョンに近づいて行ったリンが、じゃぁと言った。
「アッパよりも頑張れば許してあげるの!?」
「ああ、俺よりもいい男に成るんだろ!」
お前もなとリンを抱き上げるテギョンは、ソリを覗き込みながら、いい女になるなと嬉しそうに笑っていて、頷いたリンが、オンマみたいになるかなとテギョンの頬にくっ付いている。
「僕はなれるよ」
「俺も!」
「ソンセンニムには、負けません!」
三者三様にテギョンにガッツポーズをしてみせた。
「じゃぁ、お昼をどうぞ」
ミニョが、カウンターに出来上がったオムライスを並べると一足先にそれを食しているユンギは、美味くて幸せだ~とガッツポーズをしていて、隣に腰を降ろしたリンが、何しに来たのとスプーンを口に運びながら聞き、ミニョssiに会いにと笑ったユンギに再び思い出した様に睨みつけたテギョンが、ミニョの少しだけ変化した体型に目を細め、首を振り、スプーンを手にしたのに、着信を知らせた携帯にイラつきながらも出てしまったテギョンは、テレビ電話の向こうから押し合う様にテギョンに仕事に来ない怒りをぶつけたミナムとジェルミに散々文句を言われ、目の前の緑と黄色のオムライスを口に入れて散々な日だと呟いて、ミニョの傍らにより、その額に口付けて、ユンギにニヤッと笑って仕事に出かけて行った。
「子供みたいですね~」
「ふふ、そこが好きですけどね」
「ごちそうさまです」
色んな意味を込めたユンギが手を併せ、子供達がソリの傍らでその寝顔を見つめて、早く大きくなってねと呟いているそんな午後の出来事で、ソリへの求婚とミニョへの興味とテギョンにライバル宣言をした子供達とテギョンの悩みが増えた事だけは確かな午後の出来事だった。
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あは。(´д`lll) ひっさしぶりにグッチャグチャ落としきれなかったかな~Vr.次回がんばろm(_ _ )m
最後まで読んで頂いてありがとうございました~(-^□^-)
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