翌日、夕方から始まるコンサートの為にリハーサルに出掛けていったA.N.Jellは、現地スタッフからゲストという女性を紹介されていた。
国民的スターだというその女性は、決して若くは無く、長年積み重ねたものが顔に滲み出ているようなそんな人だった。
「残念だったなシヌ!!」
テギョンが揶揄かう様にギターを調整しながらシヌに言った。
「別に、ただ聞いただけだろ」
何の感慨もない表情でシヌは答える。
「それより、今日は、ミニョとリンは、来ないのか!?」
まだ、誰もいない客席を見つめてシヌが聞いた。
「ああ、今日は海岸で城を作るそうだ」
「城!?」
「ああ、砂遊びだろ・・・絵まで描いてた」
テギョンが、昨日見せられたリンの絵を思い出し呆れた様に言った。
「あんな物が、出来るとは思えんが・・・」
はぁーと溜息を零すテギョンは、それでも嬉しそうにニンマリしてる。
「ふうん・・・砂遊びねぇ・・・」
シヌは、考えるように唇に触れたが、後ろから掛かったスタッフの声にああと返事をしてテギョンの横を離れた。
「さぁ、リハ始めるぞ!!」
ミナムとジェルミが、音を合わせたのを確認したテギョンが声を掛け、夕方までの短いリハーサルが始まった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「オンマー違うー!!」
リンは、ミニョの伸ばされる腕に立ち上がって首を振っていた。
「えー違うのですかー」
ミニョは、砂に突っ込んだ腕を動かしては、この辺と言いながら穴を掘っていた。
「うーん、もっと右ー」
リンに指示されるままに砂を掻き分けていくが、水で固めているとはいえ柔らかい砂は崩れやすく、慎重にすればするほど違うと言われていた。
「うーんちょっと違うけど、大丈夫ー」
向こう側までの小さな空洞を見たリンからやっとOKが出たようだ。
「次はここー」
そう言って持っていた絵をミニョに見せる。
「コレは、なかなか難しそうですね・・・」
頬に手を当てたミニョは、リンの指差す絵を見て難しい顔になっていく。
「こういうのは、アッパの方が、得意な気がするのですが・・・」
ミニョが、考え込むように呟いているとリンが立てた指と首を振っている。
「アッパはこういうの一緒にしてくれないからダメなのー」
ミニョが首を傾げて、瞳を動かし、その姿にリンが続けた。
「アッパはねー、お庭のお掃除も嫌なんだってー」
ミニョの首が益々曲がる。
「オンマが、お花大事にしてるから一緒にやるけど本当は触るのも嫌ーい」
「アッパが・・・言ったのですか!?」
こっちねと言ったミニョは、リンの持っていたバケツに砂を入れて、波打ち際に浸している。
「そうだよー!アッパは、オンマの為なら何でもするんだってー!!」
リンが、受け取ったバケツを持ってはしゃぎながら未完成の城に近づいていくが、ミニョは、リンの言葉に赤くなる頬を押さえて後を追っていった。
下層部分が出来上がっている砂の城を見つめたリンが、バケツから水分の含まれた砂を取り出して撫で付けていく。
「ミニョはな、ぽやーんとしてるだろ!」
ミニョが、後ろに立って覗き込んだ時、リンが突然低い声を出して言った。
そのあまりにテギョンそっくりな物言いにミニョの目が見開かれている。
「リ・・・ン」
戸惑ったように上擦る声で名前を呼ぶと、ヘヘっと照れ笑いをしたリンが振り返った。
「アッパがね、僕によく言うのー! オンマは、事故多発帯で、迷惑も一杯掛けるけど傍に居ないと気になって仕方ないんだってー!だから、一杯一緒にいるにはどうしたら良いのかいっぱいいっぱい考えたんだってー」
リンは、嬉しそうにミニョに微笑み掛けて、また砂に向き合い、膝に手を置いて屈み込むようにそれを見ているミニョは、しかし、リンが何を言いたいのかを考えている。
「砂に書いたんでしょー」
ペタペタと砂を手のひらで叩いて片目を瞑りながらリンは話す。
「えっ!?」
ミニョは、何のことですかとリンの隣にしゃがみ込んだ。
「アッパのプロポーズのお返事ー」
「えっ・・・ええーと・・・・・・」
書いたんでしょと今度は、リンが、ミニョの顔を覗き込んだ。
「何で知っているのです!?」
戸惑いを隠すように努めて冷静にゆっくり言葉を紡ぐミニョは、それでも動揺しているのが判るほどに赤い顔をしている。
「アッパがね、教えてくれた」
あっさり白状するリンは、昨日テギョンが、ミニョに着ろと言ったワンピースとプレゼントしたサンダル、それにこの風景の事を聞いたとミニョに伝えている。
「アッパとねお散歩してたら教えてくれたよ!オンマと一緒に歩いたって」
昨夜、遅くにテギョンが一人で外に出ていった事をミニョは、知っていたがリンも一緒だとは思いもよら無い事で、ホテルから戻り、リビングスペースで、ジェルミやシヌ、ミナムに遊んでもらっていたリンは、明日も早いとのテギョンの言葉に皆が塵尻になる中、ミナムの部屋で寝ると言って枕を持って出て行ってしまっていた。
テギョンとミニョは、顔を見合わせ首を傾げたが、まぁ良いといつの間にかふたりだけで重なるように眠りについて、しかし慣れない空間と潮騒にふと目覚めて、隣にいたはずのぬくもりもない事にミニョは、腕を伸ばして確かめ、回廊から微かに聞こえた唄声にそこにいるんだとほっとしてまた眠りについたのだった。
そんな時間にテギョンと散歩をしていたというリンは、テギョンに思い出話を聞いたとミニョを驚かせ、その頬に添えられる手のひらは、熱を持った証拠だ。
「えっと、リン!!オンマちょっと泳いできますねー」
ミニョは、何を思ったのかぎこちない言葉と足取りで海に入って行き、城を作る事に夢中のリンは、わかったーと返事だけしてにっこり微笑んでいるのだった。

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国民的スターだというその女性は、決して若くは無く、長年積み重ねたものが顔に滲み出ているようなそんな人だった。
「残念だったなシヌ!!」
テギョンが揶揄かう様にギターを調整しながらシヌに言った。
「別に、ただ聞いただけだろ」
何の感慨もない表情でシヌは答える。
「それより、今日は、ミニョとリンは、来ないのか!?」
まだ、誰もいない客席を見つめてシヌが聞いた。
「ああ、今日は海岸で城を作るそうだ」
「城!?」
「ああ、砂遊びだろ・・・絵まで描いてた」
テギョンが、昨日見せられたリンの絵を思い出し呆れた様に言った。
「あんな物が、出来るとは思えんが・・・」
はぁーと溜息を零すテギョンは、それでも嬉しそうにニンマリしてる。
「ふうん・・・砂遊びねぇ・・・」
シヌは、考えるように唇に触れたが、後ろから掛かったスタッフの声にああと返事をしてテギョンの横を離れた。
「さぁ、リハ始めるぞ!!」
ミナムとジェルミが、音を合わせたのを確認したテギョンが声を掛け、夕方までの短いリハーサルが始まった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「オンマー違うー!!」
リンは、ミニョの伸ばされる腕に立ち上がって首を振っていた。
「えー違うのですかー」
ミニョは、砂に突っ込んだ腕を動かしては、この辺と言いながら穴を掘っていた。
「うーん、もっと右ー」
リンに指示されるままに砂を掻き分けていくが、水で固めているとはいえ柔らかい砂は崩れやすく、慎重にすればするほど違うと言われていた。
「うーんちょっと違うけど、大丈夫ー」
向こう側までの小さな空洞を見たリンからやっとOKが出たようだ。
「次はここー」
そう言って持っていた絵をミニョに見せる。
「コレは、なかなか難しそうですね・・・」
頬に手を当てたミニョは、リンの指差す絵を見て難しい顔になっていく。
「こういうのは、アッパの方が、得意な気がするのですが・・・」
ミニョが、考え込むように呟いているとリンが立てた指と首を振っている。
「アッパはこういうの一緒にしてくれないからダメなのー」
ミニョが首を傾げて、瞳を動かし、その姿にリンが続けた。
「アッパはねー、お庭のお掃除も嫌なんだってー」
ミニョの首が益々曲がる。
「オンマが、お花大事にしてるから一緒にやるけど本当は触るのも嫌ーい」
「アッパが・・・言ったのですか!?」
こっちねと言ったミニョは、リンの持っていたバケツに砂を入れて、波打ち際に浸している。
「そうだよー!アッパは、オンマの為なら何でもするんだってー!!」
リンが、受け取ったバケツを持ってはしゃぎながら未完成の城に近づいていくが、ミニョは、リンの言葉に赤くなる頬を押さえて後を追っていった。
下層部分が出来上がっている砂の城を見つめたリンが、バケツから水分の含まれた砂を取り出して撫で付けていく。
「ミニョはな、ぽやーんとしてるだろ!」
ミニョが、後ろに立って覗き込んだ時、リンが突然低い声を出して言った。
そのあまりにテギョンそっくりな物言いにミニョの目が見開かれている。
「リ・・・ン」
戸惑ったように上擦る声で名前を呼ぶと、ヘヘっと照れ笑いをしたリンが振り返った。
「アッパがね、僕によく言うのー! オンマは、事故多発帯で、迷惑も一杯掛けるけど傍に居ないと気になって仕方ないんだってー!だから、一杯一緒にいるにはどうしたら良いのかいっぱいいっぱい考えたんだってー」
リンは、嬉しそうにミニョに微笑み掛けて、また砂に向き合い、膝に手を置いて屈み込むようにそれを見ているミニョは、しかし、リンが何を言いたいのかを考えている。
「砂に書いたんでしょー」
ペタペタと砂を手のひらで叩いて片目を瞑りながらリンは話す。
「えっ!?」
ミニョは、何のことですかとリンの隣にしゃがみ込んだ。
「アッパのプロポーズのお返事ー」
「えっ・・・ええーと・・・・・・」
書いたんでしょと今度は、リンが、ミニョの顔を覗き込んだ。
「何で知っているのです!?」
戸惑いを隠すように努めて冷静にゆっくり言葉を紡ぐミニョは、それでも動揺しているのが判るほどに赤い顔をしている。
「アッパがね、教えてくれた」
あっさり白状するリンは、昨日テギョンが、ミニョに着ろと言ったワンピースとプレゼントしたサンダル、それにこの風景の事を聞いたとミニョに伝えている。
「アッパとねお散歩してたら教えてくれたよ!オンマと一緒に歩いたって」
昨夜、遅くにテギョンが一人で外に出ていった事をミニョは、知っていたがリンも一緒だとは思いもよら無い事で、ホテルから戻り、リビングスペースで、ジェルミやシヌ、ミナムに遊んでもらっていたリンは、明日も早いとのテギョンの言葉に皆が塵尻になる中、ミナムの部屋で寝ると言って枕を持って出て行ってしまっていた。
テギョンとミニョは、顔を見合わせ首を傾げたが、まぁ良いといつの間にかふたりだけで重なるように眠りについて、しかし慣れない空間と潮騒にふと目覚めて、隣にいたはずのぬくもりもない事にミニョは、腕を伸ばして確かめ、回廊から微かに聞こえた唄声にそこにいるんだとほっとしてまた眠りについたのだった。
そんな時間にテギョンと散歩をしていたというリンは、テギョンに思い出話を聞いたとミニョを驚かせ、その頬に添えられる手のひらは、熱を持った証拠だ。
「えっと、リン!!オンマちょっと泳いできますねー」
ミニョは、何を思ったのかぎこちない言葉と足取りで海に入って行き、城を作る事に夢中のリンは、わかったーと返事だけしてにっこり微笑んでいるのだった。
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