「おぅう・・・」
「あぶ・・ぁ」
「オンマーふたりとも起きたよー」
ダイニングで、ヘイとすっかり話しこんでいたミニョは、リンの声にヘイと顔を見合わせ、リビングにやってきた。
じーっと海を眺めながら家にいるのと大して変わらない時間を過ごしているリンは、潮騒に耳を傾けながら、いつものノートを拡げてメロディーを作っている。
しかし、ここにピアノが無いせいで思うように行かないらしく、時折、難しい顔をして腕を組んでみたり、空で指を動かしたりしていた。
「リン!ありがと」
ヘイが、ソファに座ってリンにお礼を言ってふたりを抱き上げた。
腕の中のふたりは、欠伸をしながら腕を動かしたり、顔を触ったりしている。
「ねぇ、ミニョ!まだ時間も早いし、行きましょうよ!」
ヘイが、交互にふたりの世話をしながら、ミニョに声を掛けた。
「そうですね・・・まだ、陽も高いですからね・・・でも」
大丈夫ですかとミニョは、ヘイを見ている。
「大丈夫よその辺もバッチリ考えて荷物増やしたんだし!折角来たのに楽しめないなんて嫌じゃない!!」
「判りました!じゃぁ、泳ぎに行きましょう」
「やった!それじゃ、準備してくるわ」
ヘイが双子を連れて部屋に戻って行った。
「リン、遊びにいきましょう」
「うん」
ミニョとヘイの会話を首を挙げて見聞きしていたリンは、直に返事をした。
「おばちゃんにお城見てもらおー」
「そうね、きっと褒めてくれるわ」
ミニョとリンも着替えのために部屋に向かって行った。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ヘーじゃぁ、本当に荷物増えてたんだ」
ジェルミがミナムに水を渡してタオルで汗を拭いながら言った。
「ああ、何の必要があるのか全く判らないけどキャリーケース一つ分増えてたぜ」
椅子に座って休憩中のA.N.Jellは、2日目のライブ会場を見渡しながら、時折、ジェルミのスティックの触れ合う音と、シヌのギターとミナムの歌声で会話の中にもまだまだ練習不足とそれぞれが気になるところを直しながら、話をしていた。
「ヘイは泳がないのか!?」
昨日、リンとミニョが海辺で城を作りながらも泳いで遊んでいた事で、シヌがミナムの顔を見た。
「うーん、一応女優だし・・・日焼けは不味いと思うけど・・・」
ミナムは、考え込むようにして、水をグッと煽った。
「でも、水着もしっかり用意してたし、泳ぐつもりじゃないかな」
「子供達は、どうなんだ!?」
「あいつらには、浮き輪!ふたりで入れるやつ! 探して持ってきてる!仕事が終れば休みじゃん!そしたら俺が連れて行こうと思ってさ!」
ミナムはすっかり休みの予定まで決まっている様だ。
「ミニョは、どうするんだろ!?」
ジェルミがライブ後の休みについて聞いた。
「ああ、テギョンヒョンと3人で観光するって言ってたぜ」
ミナムが、新しい水を手にとって答えた。
「というか、ジェルミ!お前もいい加減ミニョじゃないだろ!?」
「えっ・・・」
ミナムの言葉に驚いたジェルミが、首を傾げた。
「・・・も、って何!?」
疑問に思ったところがミナムのツボだったのか、ぷっと吹き出してゲラゲラ笑い出したミナムとその横でシヌがクスクス笑っている
「シヌヒョンまで!何なのさっ」
ジェルミが不満そうにふくれっ面をしたので、シヌが先に口を開いた。
「俺も言われたんだよ! ミニョの事を思い続けてるのかって」
笑いながら、それでも静かに答えたシヌにジェルミが、きょとんとしている。
「えーっ!!何だよぅそれっ、そういう意味じゃないよ!!」
ジェルミは、ミナムに膨れている。
「いつまでも、子供じゃないんだからさっ!いい加減ミニョの事は良い思い出だよっ」
「はっ、ははっ、そっ、そうなのか」
ミナムは、腹を押さえながらジェルミの顔を見ている。
「そうだよ!幾ら好きでもそこまでじゃないよ」
「まだ、好きなんだ」
「そりゃね、多分一生好きだよ」
「重症だな」
「重症でも良いんだよ!ミニョが幸せならそれで良いんだ」
そう思えるようになったんだとジェルミは小さく呟いていた。
「ミニョと一緒に出掛けることも一緒に過ごす事も無くなったからな、一緒に仕事をしている時は、それほど気にもならなかったけど、こうして、旅行でも一緒に過ごせる時間は、やっぱりあの頃を思い出すし、あの時の感情も一緒に連れてくるさ」
シヌが、離れて打ち合わせをしているテギョンを見た。
「あいつなんて、未だに俺を警戒してるからな」
「ああ、そういえばそうだね」
ミナムもそちらを見ると、終ったらしいテギョンがツカツカと歩いてきた。
「なんだ!?」
じーっとテギョンを見ているミナムに向かって水を手に取りながら聞いている。
「ヒョンさぁ、ミニョと観光するんだろ!?」
「ああ、それが」
「灯台も行くの!?」
ミナムの言葉にテギョンはまた、吹き出して、慌ててタオルを差し出したシヌが、上目遣いで立っているテギョンを見ていた。
「何の事だ!!」
昨夜の様にギロっと睨むテギョンは、苦虫を噛み潰したような顔をしていて、意味深な発言にミナムに対して妙な警戒心を露にしていた。
「いや、コテージから見えるからさ、ただ聞いて見ただけ」
下を向いたミナムは、シヌに向かってぺろっと舌を出している。
「灯台から見る景色ってまた違うよね!」
ジェルミが何の感慨も無くそう言ったが、何故かテギョンに睨まれて黙ってしまった。
「っとにお前ら仕事に戻れ!休憩は終わりだ!!」
テギョンが促すと、皆顔を見合わせて、席を立った。
「頑張ろう!」
「ああ、良いパフォーマンスを」
それぞれにハイタッチをしたりしながら、ライブに向けての数時間、最後の練習に向かって行き、ギターを抱えて最後尾を歩いて行くテギョンは、ミナムの意味深発言に何を知っているんだと小さく呟いていたのだった。
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