ゾロゾロ並んで歩く一行が、一階ヘ降りる階段を最後の一段まで降りてしまった時、マ・室長が、慌てた顔でゼイゼイ言いながら呼び止めていた。
「ちょっー!そこで、STーOP!!」
二階の階段の手すりに身を乗り出して手を振っている。
「なんだ!?」
ミナムが、そちらを見上げ上目遣いで見たが、目を細めるとマ・室長が、階段を降りてきた。
「STOーP!!」
はぁはぁと息を切らせて、腰を折りながら、手のひらを見せた。
「何だよ!何かあったのか!?」
「・・・はぁ・・・いっ、いま連絡があって・・お・・・おもて・・危険だって・・」
「はぁ!?」
肩で息をするマ・室長を見たミナムは、ロビーから見える表を見つめた。
自動ドアの向こう側は、石畳の先に広がる階段で、その上で、数人の女性が何かを話している姿が見える。
その前には、警備員が数人立ってそれを止めているらしい光景が見て取れた。
「何だよ、いつものファンだろ!?」
ミナムが歩き出そうとするとマ・室長が首根っこを掴んで慌てて止めた。
「違う!!」
「違うって誰なの!?」
ジェルミが不思議な顔で前に出てくると、覗き込むように膝を折った。
「さっき、オーデイションを受けた母親らしいんだ」
マ・室長が、ミニョの腕の中に収まっているリンを見た。
「何!?」
「何だ!?」
テギョンとミナムが、揃って声を出したが、他の面々は、マ・室長を見ている。
「僕!?何かしたのー!?」
リンが、心配そうに口にしている。
「そんな訳無いだろ!!」
テギョンが、何故かマ・室長に向かって憤っている。
「おっと、恐いな!切れるなよ」
漸く息を整えたマ・室長が、リンを見て、大丈夫と言うと外を見て言った。
「リンssiに会わせろって喚いているらしいんだよ」
「なんで!?」
ミナムが、一行が外から見えそうなので、両手を拡げてロビーのピアノに近づけていく。
皆、黙って従った。
「実力が出せなかったって」
「どういうこと!?」
ジェルミが、外を窺いながら聞くとマ・室長が、ニタリとしたり顔をした。
「何だよ・・・」
テギョンが、嫌な顔だと言いながら、片目を瞑った。
「見惚れて実力が出せなかったそうだ」
「どういうことなのー!?」
ジェルミが、少し大きな声を出すとシヌも僅かに驚いた様だ。
「ああ、そういうこと」
ミナム一人だけ納得顔で口笛でも吹きそうに笑った。
「チッ、それは、関係ないだろうが!!」
テギョンも納得したようで、溜息をついた。
「お前の作戦勝ちって事だな」
リンを見て頭を撫でると、笑顔を作ったリンが、うんと言っている。
「どういうことですか!?」
「なんだ!?」
「どういうことなのっ!!」
ミニョ、シヌ、ジェルミが、揃って口を開いた。
重なった声にミニョが僅かに頭を下げる。
「ははぁん、大方、リンに直接会わせろとか言ってるんだろ!あのおば様たち!」
ミナムが、ジェルミの様に膝を折りながら外を確認した。
「それだけなら良いんだけど、あの子の親に会わせろって言ってるんだよ」
「ああ、それは・・・」
ミナムが、テギョンとミニョとリンを見た。
「三人揃って出て行くとまずいなぁ・・・」
「そうだろ」
マ・室長も三人を見る。
シヌも何となく、話の流れを掴んでいるようで、解らないと首を傾げるジェルミがぽかんとしている。
「ヒョンいつもリン連れて歩いてるじゃん!平気でしょ!?」
「そういう事じゃないんだよ」
ミナムがジェルミの肩に手を置いた。
「車、廻してくるから、裏から出ようぜ!」
「そうだな・・・」
シヌがそう言いながら、ジェルミお前もあっちと指を指した。
「俺とミナムだけの方が良さそうだ」
「そうだね!!その方があしらい易いよ!」
ふたりが顔を見合わせて頷き合うとジェルミは、唇を突き出して不満そうな顔を見せたが、じゃぁ、待ってると言った。
シヌとミナムは、入り口に向かって行き、テギョンは、任せると言うとミニョの肩を抱いてさっさと裏口へ向かった。
「マ・室長は!?行かないの!?」
ジェルミが、首を傾げながらそう聞いたが、ああと言ったマ・室長は、少しだけ、嫌そうな顔をして、頭を掻いた。
「社長に呼ばれてるんだよなー! 昼は社長とだ!!」
「ふーん!ところで、オーディションで何かあったの!?」
ジェルミが、不思議そうに聞くとマ・室長は、ほんの僅かに動揺しながら首を振った。
「テギョン達と行くんだろっ! 早く行かないと置いて行かれるぞっ」
入り口と裏口を交互に見たマ・室長につられる様に左右を見たジェルミは、あっと開けた口に手を当て、慌てて走り出した。
「ミーニョー!待ってよー」
バタバタ走っていくジェルミを見送ったマ・室長は、入り口を見て溜息をついている。
「リンssiの格好が原因だろうなぁ・・・」
今回のオーディションの目的を知っているマ・室長は、胸の前で十字を切った。
「シスター!!許して下さい!!」
そう言って、さっ行くかと明るく二階に戻って行ったのだった。