この数年、A.N.Jellを筆頭に事務所には、若い後輩も増え、グループを組むなどして活動をしているが、かつて、ミニョが特例で所属していた以外は、アン社長の栓術的な方針は変わっていない為、学齢前の子供を集めて何をするのか、全くもってテギョン達に想像も付かない事だった。
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「子役の養成とかって、他でやってるでしょ!?うちも始めるのかな」
ジェルミが、階段を上がって行ったリンとマ・室長を見つめながら聞いた。
「さあな、それも経営のうちだろ!」
テギョンは、ミニョを促すと肩を抱いたままスタジオに入って行った。
ソファに座って、隣にミニョを座らせるとまた、譜面を手に取っている。
「そんな事よりお前、ミナムはどうしたんだ!?」
ジェルミに向かって声だけ掛けた。
「ああ、そうだよ!電話してみよ!」
「オッパなら、お昼食べようってメールが来てましたけど」
ミニョが、テギョンに向かってそう言うとジェルミが、えっとミニョを見た。
「リンが終ったら、ロビーで待ってるって」
「リンが!?」
テギョンは、怪訝な顔をして唇を一撫でしている。
「あ!?あいつ、まさか、この件に何か係わっているのか!?」
リンが引き受けたことを何とも思っていなかったテギョンだが、ミナムが絡んでるとしたらと思案し始めた。
「あいつが、絡んでるとしたら、何かあるな」
ひとりで、ぶつぶつと言っていたが、突然立ち上がると傍らに置いていたジャケットを手に取った。
「おい、ミニョ一緒に来い!」
ミニョの手を引っ張って立たせている。
「えっ!?何処に行くのですか!?」
「会場だよ!」
「オッパが行ったら騒ぎになるでしょ!?」
ミニョは、リンの付き添いで一緒に行くと言ったが、マ・室長に遠慮してくれと断られていた。
且つて、ミニョも芸能活動をしていた過去もあり、母親達の世代は、テギョンもミニョも良く知っている為、リンが、ファン・テギョンの息子だと露見するのは、事務所側にとっても都合が悪いと言われ、リン一人でという事で納得させられていた。
「ああ、だから、中には入らないさ!来いよ」
「ヒョン、何するの!?」
ジェルミが、テギョンを不思議な顔で見ている。
「ミナムを捜してきてやる」
「えっ!?何処にいるか判ったの!?」
「ああ、多分な・・・それより、お前、練習に戻れよ!」
テギョンはジェルミを睨みつけるとミニョを伴ってスタスタと歩いていってしまった。
残されたジェルミは、首を傾げながら、まっいっかと言っている。
「お昼は一緒に食べるって約束したしねー」
そう言いながら練習に戻って行った。
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階段を昇ったリンとマ・室長は、4階に辿りつくと並んで歩き出した。
「ねぇ、マー・室長、アレはー!?」
リンが、繋いだ手の先を見上げている。
「んっ!?ああ、ちゃんと用意してるよ!ミナムが買ってきてくれたからな」
リンを見下ろしながら、マ・室長が答えた。
「しかし、本当にそれでやるのか!?」
「うん!だって、僕ってアッパに似てるでしょう!?」
リンが、髪をかき揚ながらにっこり笑っている。
「確かにテギョンにそっくりだけど・・・」
マ・室長は、不可思議な顔をしながらリンを見た。
「別に気にはならないと思うけどなぁ・・・」
何か言いたそうなマ・室長だが、リンの尖った唇を見て驚いている。
「そうやって睨むところなんかは、確かに似ているな」
「そうでしょ!だから、やっぱり必要ー!!」
リンが、片手を挙げている。
「そうだな、じゃぁ、こっちだから・・・」
マ・室長に促されたリンは、にこにこ笑顔を浮かべながら会場へ向かって行った。